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朝窓の外を見ると、昨日までの茶色の岩肌の景色から一変して、銀色の世界が広がっている。寝ている間に雪が静かに降っていたようだ。
最近は朝食に、オートミールを食べている。カロリーが高めなので、朝から活動するにはもってこいである。
ロブチェから、真っ白い風景の中をゴラクシェップまで向かう。ゴラクシェップは、エベレストBCの手前にある村で、標高5,100mと高い場所にあるロッジである。風もなく、太陽が白い地面を反射して、体感温度が急上昇する。
2時間後に到着したゴラクシェップは、たくさんの人でごった返している。どのロッジを当たっても、部屋は満室。
「もしいっぱいだったら、友達が張っているテントで寝ましょう」とラクパさん。私は寝る所さえあれば問題ない。と思っていた矢先、最後に当たったロッジに幸運にも空室があった。
部屋を確保して、昼食にパスタを食べた。
「天気が良いので、今日上がりましょう」
実は私、昨日から女性特有の月一行事がきてしまっている。標高が一番高くなる時に限って・・・と思っていたが、いつもの腹痛が全くない。高山にいると痛みも感じなくなるものなのか。痛みはともかく、シャワーをしばらく浴びれないのが少々気になる。山の暮らしでは男性が非常に有利だと思う。
登りのペースや歩き方も、この数日で自分なりのものを掴み出してきたような気がする。自分のペースがリズミカルになると、登りが気持ちよくなってくる。私は大股で歩く癖があるので、意識的にその半股で一歩を出すように心がけ、踏み込んだ足の膝は伸ばすようにしている。
「昨日同じ部屋になったガイドの足が本当に臭くて、寝れなかったです」
普段登山の最中は、2人で打ち合わせでもしたかのようにラクパさんも私もいつも無言なのだが、余程昨晩の衝撃が忘れられなかったのだろう。
登山中、ラクパさんはしきりにその出来事の悲劇さを訴えた。私は大笑いするのを我慢して、酸欠にならないように話し半分で聞き流した。
確かに、ロッジの部屋の前を通るだけで異臭が鼻をつくのに、男性の部屋の中は一体どうなっているのだろう。そんな妄想に駆られつつも、頂上付近の急勾配に入ると、体を動かすことしか考えられなくなった。
世界最高峰のエベレストは、私達の前に姿を見せてくれた。周囲の山は雪化粧をしているというのに、エベレストは黒い岩を剥き出しにしている。それが、どれほどの強風が吹き付けているのかを物語っている。
頂上にいたのは正味10分。下山を始めて5分もすると、エベレストはあっという間に雲に包まれていた。時折、雷のうなり声がする。あちこちで雪崩が起っていた。私は今とんでもない場所に来ているのだ。
☆今日のご飯☆
オートミール リンゴが乗っていて、その上に砂糖をかけて食べる
ERIKO