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タンボチェのヒマラヤロッジは満員で、ストーブの設置してある食堂には、たくさんの人が集まっている。
昨晩は、席が隣になったスペイン人グループに、彼らが持参していたチョリソやらオリーブオイルやらをごちそうになった。こんな所にまでご当地グルメを持ってくるなんてさすが。
私の食欲は確実に落ちていて、1日を通してスープ1杯ほどしか食べていない。このまま標高が上がっていったら一体どうなるのだろうか。
今日は、タンボチェから標高4,300mのディンボチェまで移動する。
今日まで別グループで、同じ行程を辿っていた、インド人のニパさんと、体の大きいドイツ人青年のグループがタンボチェで解散になった。理由は、ガイドがニパさんに対してセクハラをしたこと。ニパさんは精神的ダメージも負っていて、これ以上トレッキングを続ける気力を失い、ヘリコプターをチェーターしてルクラまで帰るのと言うのだ。空港には事情聴取のため警察も待機しているのだそう。そんなことで、突然独りになってしまったドイツ人の青年も私達と一緒にディンボチェへ向かうことになった。
彼は弱冠21歳で、アマ・ダムラムという山へ登るためにここへ来ている。もし彼が登頂に成功したら、最年少の記録を塗り替えることとなる。全くすれた所のない、純粋に山を愛する青年である。彼と一緒に山を眺めながら歩いていくと、私の心も洗われていくようだ。
出発して1時間経った時、ガイドのラクパさんの様態が急変した。聞けば、昨日食べたチャーハンがあたったのだという。かなり辛そうにお腹を抑えながらも、仕事を全うする。
ほとんど休みなく歩き続け、標高4,000mを越えた辺りから、景色が変わり始めた。黒い岩がむき出し、背の低い植物があちらこちらに点在し、いまにもアルパカが出てきそうな雰囲気である。私はこの景色にペルーへ来たような幻を見る。
この先ヒマラヤの景色はどんな姿を見せてくれるのだろうか。
予定より1時間早く午後2時に、ディンボチェのロッジに到着した。体調は良好。明日はここで1日高所順応の予定。