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現地時間7月24日朝7時31分。メキシコシティーのベニート・フアレス国際空港を日本へ向けて飛び立った。夜中まで仕事をしていたせいで、出発の20分前にアンヘルさんに起こされた。全力を出せば、シャワーと支度は出来るものである。
約1年4ヶ月に及ぶ、中南米・カリブの旅が終わった。出国前の準備を入れると、およそ2年に渡るプロジェクトだった。これまでの私の人生の中でも、一番長い期間、全力で自分を生きた時間でもあった。
ボリビアから始まり、最後のメキシコまでラテンアメリカを縦断する旅。途中の事故で予定や訪問地が変更になってしまったにしろ、25カ国を訪問することができた。
これもたくさんの人たちの協力以外のないものでもない。本当におんぶに抱っこの大名旅だったと思う。
正直、旅の途中、予定通りにいかないことや辛いこともたくさんあった。でもそれを乗り越えられたのは、たくさんの人たちの助けと誰かの勇気や元気になりたいという思いがあったからで、自分のためだけであればただの怖さに変わっていただろうと思う。
自分の知らない土地に息づく人たちの人生が知りたくて、私は旅という手段を選んだ。私は旅人なんかではない。旅自身が目的ではなく、旅は様々な場所で生きる人たちの人生を知るための手段でしかないである。
私が出会った、高地、ジャングルの中、大都会、孤島、様々な環境で生きる人達。その気候や環境によって異なる食べ物、着るもの、言葉の表現の仕方があった。
ある場所ではタクシーというものはどこでも連れて行ってくれる乗り物ではなかったり、ある場所ではお金より人に心を与える方が価値があったりした。
異なった環境に自らを放り込むことで、自らが構築した常識を捨て、新しいものを受け入れることをただ繰り返した。
私は幾度となく、彼らの生きる姿や生命力に元気づけられ、彼らというフィルターを通して自らの生を眺めた。そして、人間の全ての営みには努力があり、山や海などの自然の中には、自然との関わりを通してでしか見えない人間の姿というものがあった。
私がこれまでここに記してきたことは、私の視点や物の捉え方によって、ありのままの姿から変化したものであるが、私が感じたのと同様に、彼らの生きる姿によって元気づけられた人が一人でもいたならば、私の今回のプロジェクトは大成功である。
自分が体験した領域、すなわち世界というものは、思考を究極にシンプルにし、本当に何が大切なのかを浮き彫りにさせる場所だった。そしてその究極のシンプルさは、実に創造的なものを生み出すのだった。
人生は決して自分探しではない、自分を創造することである。
旅の途中、出会った人達の何人かが亡くなり、新しい命が生まれた。その度に、私たちは見えない地球の呼吸の中で息づいているのだと感じるのだった。
私が歩いた全ての道は、人に通じていた。そこには様々形の“生”があり、それは何にも代え難い美しいものであった。
私が見ている今この場所だけが全てではない。知ることのない遠い場所で、我々は同じ一生を生きている。この毎時間、毎分、毎秒に、私の知ることない同じ時間がどこかでしかし確実に流れているのだ。
そんなことを心のどこかで感じながら生きていける人間なりたいと思う。私はそして、それを思うだけで心が豊かになるのだ、だたそれだけなのに。
私はここで何をしているのか?
ここにどれくらい留まるのか?
ここからどこへいくのか?
私はどこから来たのか?
私は誰なのか?
私の人生の旅は、私の呼吸が止まるまで続く。
旅の日数 481日
飛行機搭乗回数 57回
滞在した家族 45家族
総移動距離 105,512km
最後まで応援して下さいました皆様に心から感謝を申し上げます。
ERIKO