
ガリフナ族の寺院ムルワンドゥ
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『明日先住民族について勉強している生徒達に、ガリフナの伝統文化やスピリチャリティーについてお話をするので、気が向いたらどうぞ』
フェリックスの誘いに、朝10時に“ムルワンドゥ”と呼ばれるガリフナの儀式が行われる寺院を再訪した。
少し早く着いてしまい、まだ誰も来ていないようだった。ムルワンドゥ内はお盆時のお墓のように、きれいに砂掻きがしてあり煙が焚いてあった。ハムティリと呼ばれるお香は、蟻が運んで作る蜂の巣のような形をした物体で、空気の浄化に使用される。
10時を過ぎた頃にアメリカ人6人がやって来た。彼らはInstitute for Sustainable International Studiesと呼ばれる学校で、先住民族について勉強しているのだそうだ。彼らの中には、私と同じゲストハウスに滞在している人もいた。
フェリックスさんが話しをした内容は、ガリフナがアフリカからどのように、なぜやって来たか、儀式が行われる目的と具体的な内容などだった。
ムルワンドゥの中は海風が通り抜け、フェリックスさんの声が響く心地よい時間に精神を委ねた。
午後はカナダ出身のカイロプラクターがいるということで、診療所まで出かけたが先生が不在だった。自転車でホプキンスを散歩し、夜はゲストハウスで月を見ながらドラムの演奏を聞き、ホプキンス最後の日はゆっくりと終わっていった。
翌朝目を覚ますと、右目が腫れ上がっている。理由は分からないが痒みと痛みで半分くらいしか開かない。
ゲストハウスで働くドイツ人夫婦にお礼を言って、プンタ・ゴルダ行きのバスに乗る。9時出発のバスは結局1時間遅れで到着した。車内はほどよく混んでいて、10分ごとに停留所に留っては、人々が乗り降りし、時折スペイン語が聞こえてくる。
スチームドラムの軽快な音楽と海風、ココナッツの木が並ぶ景色は、自分が今カリブに来ていることを体で感じさせる。
彼らの生活は科学肥料を使用しない農業を営み、電気、車やバイクなど文明の力を一切使わず、野菜や乳製品、家具などを売るという、質素な暮らしを営んでいる。ある地域のまとまったコミュニティーの中で、メノナイト同士でのみ結婚し家族を作り、生きている。
女性は頭をターバンで覆い、男性は麦わら帽につなぎの洋服を着て、長いヒゲを生やしている。
話しには聞いたことがあったが、まさかベリーズで見るとは思ってもみなかった。
しかし最近は公共の交通手段を使っている姿もよく見られるのだそうで、昔の彼らの生活とは徐々に変わって来ているのだそうだ。実際に私の乗っていたバスにも彼らの一人が同乗していた。
バスの中からは様々な人達の自らが関与しない、自然な姿の世界を見ることができる。
プンタ・ゴルダに着いたのは午後1時。ホームステイ先のパティーさんと約束した11時をとっくに過ぎてしまっている。
『家までのバスもう行っちゃったわよ』
パティーさんは、お土産屋の前のイスに腰掛け笑いながら言った。アニメの声優のような声を出す彼女が話すと真剣なことのようには聞こえない。
『次のバスは何時ですか?』
『水曜日ね』
『2日後ですか?』
このままプンタ・ゴルダに留まるわけにもいかないので、仕方なくタクシーをハイヤーすることにした。どんなに交渉しても、150ベリーズドル(7,500円)以下にはならない。ベリーズの物価は、私が訪問したラテンアメリカでも、1位2位を争う高さである。
パティーさんの家は、パナマのクナ族の家を思い出すような、コンクリートの地面と藁の屋根の作りである。ガス、水道、お風呂はもちろんない。家の柱にはハンモックが3つ取り付けてある。
パティーさんは未婚で、家には彼女のお母さんのフロレンシアさんとお父さんのサンティアゴさん、姪っ子のシャネーガちゃん6才が住んでいる。
珍しい外国人が来たと、近所の子供達がたくさん集まって来た。
パティーさんは英語を流暢に話すが、家族全員この地域で話されているモパン語しか話せない。生まれて初めて聞く言語で、グアテマラなどで聞いたどの先住民言語にも似ていない。サ行とタ行に強くアクセントが置かれるカクカクした印象を与える言語である。フロレンシアさんが話しかけてくれるのに、分からないのが申し訳ない気がしてならない。
子供達は英語のテキストを広げて勉強を教え合っている。遅いお昼ご飯は、カルドを頂いた。
ハンモックで少し休憩した後、お風呂、洗濯、食器洗いをするため川へ出かけた。
シャネーガちゃんは、重たい食器の入ったバケツを持って軽い足取りで滑りやすい泥道を降りて行く。私は川に着くまで2回も横転してしまった。
川のお風呂はベネズエラのロライマ登山以来である。白い小魚がたくさん泳いでいて、体をツンツン突かれる。体のゴミを掃除してくれているのか、なかなか気持ちいい。たくさんの子供のギャラリーに囲まれて汗を流した。
夕食は豆電球が暗くてよく見えなかったが、食感と味からご飯と小豆と茹でキャベツだったと思う。
歯磨きをしに外で出ると、藍色の夜空に乳白色の星が満天に輝き、蛍が瞬いている。
シャネーガちゃんはおばあちゃんが揺するハンモックに揺られてぐっすりと寝てしまった。8時に電気が消えて就寝。
マヤ村の家族 右:パティーさん、シャネーガちゃん 左:フロレンシアさん
☆El plato del hoy☆ 今日のご飯
カルド 鶏肉の入ったピリ辛スープ コクがあって美味しい!
This travel supported by BPRP
ERIKO