アグア火山



 アンティグア2日目の最初はメルセー教会を訪ねた。アンティグアの町は小規模でどこでも徒歩で行くことができ、小さいわりにたくさんのお店が密集し、特にアクセサリー類や織物類は品揃えが充実しており、素敵なデザインが多い。真っ青の空には真っ白な雲と堂々としたアグア火山が見える。




                  メルセー教会



 メルセー教会は
1584年に建てられた、バロックとチュリゲラー様式が融合した、アメリカの建築100選に選らばれている美しい教会である。職人はメキシコのプエブラという町から派遣され、耐震性に優れた建築設計で建てられたため、アンティグアを襲った数々の大地震に耐え凌いだ。

 トゥクトゥクに乗って、十字架の丘(
Cerro de Manchenとも呼ばれている)まで上がる。石畳の坂道を走るのは運転手も乗客も至難の業である。十字架の立つ丘の上まで上がると、碁盤の目になったアンティグアの町とアグア火山が正面に見える。
多くの外国人やグアテマラ人を虜にしてしまうこの町の魅力は、芸術品のような景色をどこにでも切り取ることができる町の美しさと治安の良さであろう。あと
2週間くらいゆっくりしていたかった。




                   十字架の丘



 夜行バスでフローレスへ向かう。一番良いクラスを予約してもらっていたが、あいにく故障が発覚したため、普通クラスで行くことになった。
狭い座席と冷蔵庫のような寒さの中、約
9時間、フローレスに到着した。

 フローレスはグアテマラの北部、ペテン県にある、ベリーズとメキシコの国境近くの町である。ここには、マヤ文明でも大変重要なティカル遺跡がある。荷物をホテルへ置いて、眠気をこらえてツアーバスに乗り込む。
ガイドはスペイン語と英語の
2名。同乗者はコロンビア人の家族やドイツ人、アメリカ人、メキシコに住むスペイン人など多国籍なメンバーである。

 世界複合遺産に指定されているティカル国立公園の面積は、約
57千ヘクタール。最盛期には人口5万~8万の人達が住んでおり、3千以上の建造物が建てられた。この場所で千年以上に渡って栄えた、まさにマヤの都のような場所である。




                 白鼻グマの大群


 神殿へ向かうまでの道のりで、サルや長い尻尾を持った白鼻グマ(White nose coati)の大群に遭遇した。
小雨が降り涼しい気候で、うっかりジャングルの中にいることを忘れてしまう。




ボクテと呼ばれる木の種 マヤの人達がタンパク質と鉄分と摂取していた。
味噌のような発酵した味がする。


 スペイン語担当ガイドのオスカーさんは、魚屋のおじさんみたいな人で、ゆったりしたパンツにすきっ歯を見せる笑顔は誰からも好感を得る。オスカーさんは公園内に生えている植物にも大変詳しく、頻繁に立ち止まっては効能等を詳しく説明してくれる。
ケツアルテナンゴに滞在中、マヤシャーマンの儀式で薬草がよく使われていたが、マヤの人々にとって生活に欠かせない大切なものであったと今日改めて感じた。





                    第二神殿


 暫く歩くと神殿が見え始める。これまで見て来たマヤ遺跡の規模を遥かに越える大きさに圧倒される。西暦741年に建てられた、高さ72mのマヤの建造物では最大級の第4神殿、通称“双頭のヘビ”(Templo de la Serpiente Bicéfala)に到着した。




      第四神殿からの景色 遠くに他の神殿も見える


 神殿の上まで登ると、広大なジャングルから小さく頭を出す、他の神殿が見えた。この景観は“スター・ウォーズ・エピソード4”に使われている。

 鬱蒼としたジャングルに栄えていたマヤのもう見ることない姿を想像した。
考古学は過去の産物に命を吹き込み、私達の未来を明るく照らし出す、夢に溢れた学問である。こうして聖なる神殿の上に立ち、このような景色を黙視できるのも、たくさんの人達の夢と思い、情熱が形となったお陰である。

 圧倒的な景色は、私に様々な思いを巡らせる火種のようだった。私たちが見るものはいつも、自分が内包しているものを映し出す。何かをありのままに“観る”という行為はもはや存在しないのかもしれない。私はこの景色にまつわる長い長い物語の断片に立っているような気がした。



       敷地内にある日本政府の援助で建てられた研究施設


ERIKO