
滞在先の前のマーケット
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グアテマラ第二の都市、ケツアルテナンゴに到着した。町は標高2,333mの山に囲まれた谷に位置している。
ここでは、某大学教授から紹介してもらった、マヤのアッハキッヒ(日を数える人の意=シャーマン)のエドガーさんと、奥さんのアマンダさんの家に滞在させてもらう。2人とも生粋のマヤの末裔である。
お店を経営している彼らの家は、賑わうマーケットのど真ん中にある。
シャーマンというので勝手に簡素な生活を想像していたが、お店の倉庫と一体化している家は広々としていて、現代的でWi-Fiもとんでいる。
今日は朝からエドガーさんにマヤについてのレクチャーを受けた。彼は一見穏やかで大きな口を開けて笑う、普通の男性に見えるが、直感力と洞察力、そして人を見抜く力はずば抜けた才能を持っている。
彼は私の過去をピッタリ当て、それによって影響される現在の問題を分析した。私個人は占いなど全く信じられないタイプなのだが、あまりの正確さに度肝を抜かれてしまった。
彼の家の中にある儀式の部屋で、フリホーレス(豆)を使ってもっと深く私自身を見てもらった。一握り豆を掴み、いくつかのまとまりに分け、数字を計算する。その作業で、人生に災いするある特定の原因を割り出した後、花のエキスが入ったアルコールを全身に散し、浄化作業を行ってくれた。
特定の原因は私自身も大変心当たりがあるもので、浄化作業の後は長年抱えていた肩と首の荷物がスッと下りたようだった。
キチェー族の間では、人間の体内に2種類のスピリットが住んでいると信じられている。一つは身体の後ろに半分に住んでいて、絶えず身体を外敵から守っていると言われるチャヘネル。
もう一つは、身体の前部分に住んで、眠っている間夢の世界を旅し、死とともに身体を離れ、祖先の霊が集まる場所へいき永久に留まると言われている、ハラハマック。マヤの儀式は彼らのこうした信仰に基づいて行われる。
シェラフノフに住むキチェー族がみんなマヤ宗教を信仰しているかと思えばそうではなく、キリスト教も多い。ラテンアメリカではエバンヘリコ(福音主義のプロテスタント)が増えているが、グアテマラは人口的にもっとも多いのではないかと感じる。
宗派も細かく分かれており、先日ソロラで会った女の子達は、宗教上髪の毛を切ってはいけないと話していた。
雨期お決まりの雨が振り出した午後は、マヤの賢者である、ビクトリアーノ・アルバレス・フアレス教授のもとを訪ねた。
今年で87才になるビクトリアーノ教授は、弁護士であり、大学教授でもあるキチェー語を話すアッハキッヒである。彼の家には5分おきに近所の人達が訪れ賑わっている。
午後5時には寝るという彼はとても眠たそうにしていたが、質問には快く答えてくれた。
『今日は何日だ?』と訪ねられ、『6月3日です』と答えた後に、マヤカレンダーの読みで質問していることに気づき恥ずかしくなった。マヤの賢者と話しをしているのに太陽暦なわけがない。
マヤカレンダーはツォルキンと呼ばれ、13日を20回繰り返す260日を一周期としたカレンダーである。
ちなみに今日は12日のKat(カット)と呼ばれる“空間”の日。
『私たちの体の体積は、この世にある空間に存在することを許してもらっています。ですから今日はそれに感謝をする日です』
マヤの精神はどんなものにも神が宿っているという神道に似た宇宙論を持っている。
ビクトリアーノさんは最後に『Dios puso el corazon para amar.』(神様は愛するために心を作った)と発して部屋へ戻って行った。
マヤの末裔に囲まれスピリチュアルな生活がスタートしている。
ERIKO