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車の走る音や町の騒音が聞こえないせいか、ぐっすり眠れ、自然に目が覚めた。
コスタリカ人は朝食を昼食並みにしっかりと取る。ロッジのビュッフェは、フリホール(豆ご飯)、肉などスタミナが付きそうな物ばかり並んでいる。レストランではサルサが流れていて、踊りが大好きなシニアさんはウェイターに『踊らないか?』と声をかけ、あいにく勤務中で誰も相手にしてくれないと分かるとプールサイドで一人踊り出した。
『Loca loca!!』(クレイジー)とみんなでもて栄やすと、『Mas que normal(普通以上)って言って頂戴!』と笑い飛ばされてしまった。彼女を見ていると、一瞬も人生の楽しみを無駄しないように出会うもの全てを満喫しているように思える。
アレナル火山周辺は、温泉、ラフティング、カヌーなど多様な観光施設が整っている。今回私達は、ロッジからすぐ側のTabacon Grand Spaで1日を過ごすことにした。
火山の麓にあるこのスパは、様々な温度の温泉が楽しめ、別料金でマッサージを受けることもできる。
さすが観光客大国のコスタリカ。施設やシステムがしっかりしていて、スタッフも英語が話せ、外国人の対応にとても慣れている。スパ内の天然温泉は、プールのようになっている場所や滝が流れている所など、場所によって雰囲気が変えられており、様々なタイプの温泉を楽しむことができる。
水温も日本の温泉のように温度が高く、上流のお湯はのぼせてしまうほどだった。これまで南米で入った温泉はどこも温度が低く、今回もあまり期待していなかったので驚いた。
日本と違うのはイグアナなどの動物や珍しい植物などを見ながらお湯に浸かれることや、滝から流れるマイナスイオンをふんだんに浴びることができることだ。水はクセがなくサラサラで、肌がしっとりとする。温度は高いが上がった後も体がダルくなったりすることもなかった。
体が温まった所で、スパ内にあるレストランで昼食を取った。パスタを注文したら味も抜群で申し分なし。夕方まで施設を満喫し、サン・ホセまで戻ってきた。帰りには朝から雲に覆われていたアレナル火山が三角形の尖った姿を見せてくれた。
お世話になっていた家族のクラウディアさんが来週からアメリカに出張になってしまい、今日からシニアさんの家へ引っ越しをすることになった。
クラウディアさんと過ごしたのは一週間だけだったが、すぐに仲良くなったこともあり、別れは辛かった。
家に着いて2日目から、私が喜ぶと思って、日本語を毎日少しずつ覚えて話しかけてくれた。職場ではきっと仕事のできるキャリアウーマンだと思うが、家にいる時は、マンションのベランダに来る小鳥に餌をあげるのを楽しみにしていたり、料理が大好きな家庭的な女性だった。
私が彼女のマンションを出る時には、『出会えて良かった、ありがとう』と涙を流していた。些細なことにも美しさを見る彼女は本当に美しい女性だった。
また必ず会える、そう誓ってタクシーに乗り込んだ。
ERIKO