
お世話になったバランキジャの人達
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早朝に出て行くロペスさん一家に別れを告げ、空港へ向かう。道路は朝の通勤ラッシュと重なり、交差点はバスと車が信号を無視して我こそ先にとあいた隙間に突っこんでいく。マーケットは人々が忙しなく行き交い、月曜の朝にふさわしい光景だった。
私がコロンビアに到着する約1年も前から準備をしてくれていたアントニオさん、ジュディーさん、ソニアさんとも今日でお別れ。
『またエリコがここに戻って来られるように、何か企画してみるから』と言ってくれた。人情深く、人を楽しませることが得意な彼らからはたくさんのことを学ばせてもらった。
バランキジャからメデジンまでは1時間。雲の切れ間からはアンデス山脈の山々が見える。飛行機を降りるとひんやりとした風が吹いた。
空港にはメデジンでお世話になる、シエラ家の奥様ルス・ステラさんが笑顔で待ち構えてくれていた。
ルスさんは旅の協力をしてもらっているFIALの方からの紹介で、旅が始まる1年位前から連絡を取り合っていた。
『Por fin llegaste a Medellín!!』(やっとメデジンに着いたね!)
彼女の明るさはバランキジャのお別れの寂しさを吹き飛ばしてくれた。
家までは小高い丘と牧場、緑が続く。
お家は森と間違えるほどの大きさの庭と何室もある部屋、広いリビング、テラスがあり、家具は日本のアンティークの物がたくさん置かれている。
シエラさんは前駐日コロンビア大使として日本で4年間過ごし、現在はYAMAHAの代表を務められている。
一方奥様のルスさんは、ウリベ前大統領の側近として働いていた。
そんな肩書きとは裏腹に驚くほど気さくで、底抜けに明るい。家にはお手伝いさん、ボディーガード、庭師さん計8人が働いている。
庭師の方に庭を案内してもらった。フルーツやオーガニック野菜の栽培、様々な種類の木が植樹され、ガチョウやアヒルの飼育小屋もあり、庭の中には川も流れている。植物を植える時に気を使っていることはなんですか?と質問すると面白い答えが返ってきた。
『種を植える時は、月が欠けていく時にしか植えないようにしています。木を切るときも新月から3目までに切ります』
話を聞くと、野菜などを植えたり、採ったりするタイミングは月の満ち欠けに合わせるのがとても大切なのだそうだ。
昼食を取ったあと、ルスさんとボディーガードさん2人が町を案内してくれた。メデジン特有の小窓が付いた瓦屋根の建物が並ぶ、San Antonio de Pereira(サン・アントニオ・デ・ペレイラ)の広場と教会を訪ねた。
建築物の多くは木製で背が低く、町の雰囲気はなんだか温かみがある。
ルスさんは『こんな場所100年振りに来たわ!なんて楽しい』と言いながら写真を撮っている。
広場の前でYAMAHAのバイクに乗っている男性を見つけると声をかけ、『ちょっと、YAMAHAどうよ?何年もの?』と話しかける。
見ているだけでも一瞬一瞬をくまなく楽しんでいるのが分かる。ルス(光)さんは名前の通り、一緒にいるだけで相手の心に光点すことのできる人だ。
観光モード全開になったルスさんと高台からメデジンの景色を眺め、Salto de Tequendamaita(サルト・デ・テケンダマイタ)へ向かった。山道の途中にあるちょっとした休憩所のような場所へ入ると、巨大な石の上を激しい勢いで滑り落ちる滝が流れている。滝つぼの近くまで行くと、水しぶきと緑の匂いが体全体に染み込んでいく。
日が沈む少し前に家へ戻り、夕食でシエラさんとご対面した。ラテンアメリカと日本の話で盛り上がり、新たな土地での一日が終わろうとしている。
メデジンの家族 前駐日コロンビア大使シエラさんと奥様のルスさん