配給される食料のマークシート

1/14 

 朝起きると家に誰もいなかった。子供達は学校、テレシータは仕事に出かけ、ハビエルはガスの配給の列に並びに出ていた。
Mi vida, te preparo tu desayuno,ven』(朝ご飯用意するからこっちに来なさい)
家の扉を開けると隣の家のグロリアさんが変わりに卵とハムを焼いてくれた。この建物にはそれぞれの敷居があるようでない。

 キューバ人の労働時間は1日約12時間。仕事がある日はみんなとても早く出かける。アパートの外から顔を出すと、涼しい海風と温かい太陽に体がほぐされていくよう。下を歩く人が大声で声をかけてくれるようになったが、大半の人は私を中国人だと思っている。




              食料を受け取るボッデガ


 テレシータさんが仕事から戻ると一緒にボッデガという場所へ出かけた。ボッデガは国から配給される食料を受け取る場所である。
食料は毎月1家庭に3kgの米、1.5kgの砂糖、500mlの油、1パックのコーヒー、パスタ、フリホール(黒豆)豚肉、野菜、フルーツ、卵10個が配給される。6才以下の子供がいる家庭には牛乳も配られる。
緊急で足りないものは近所の人達でお互いに補い合う。また
家族構成等によって受け取ることの出来る食料や量が違う。そして配給分を使い切ってしまうとそれ以上は購入しなければならない。
『キューバの人はこうやって生きていくしかないんだよ。君の住んでる所は随分と違うんだろうな』
ボッデガで配給をしている人達は、食料を受け取りに来る人と楽しそうに話している。
希望する食料を伝え、チェック表に印を付けていく。砂糖や米を計りにのせ、ビニール袋に入れて持ち帰る。

 学校から帰宅したデニルソンが近所の海へ連れて行ってくれた。
海岸は緑のコケが付いた岩でゴツゴツしていて、岩場では魚釣りをする人達が釣り竿を振りかざしている。

 アパートに戻ると、笑顔のハビエルさんが立っている。
『エリコ、コーヒー買ってきたよ!』
朝コーヒーが切れてなかったので、わざわざ買って来てくれたのだった。
どの場所でされてももちろん嬉しいことだが、このような生活をしているキューバであるからこそ特別な嬉しさがある。
Estamos muy contentos aun que tenemos muchas dificultades』(僕たちはいつも満たされている、例え生きることに困難があったとしても)コーヒーだけで素直に心底喜べた自分が嬉しかった。
そしてハビエルさんが言った“いつも満たされている”という意味が少し分かった気がした。


                 家の側の海岸


ERIKO