島巡りをした道順 スタートは南のSt.Philip州




 昨日出会ったローハンさん一家が、バルバドスを案内してくれると電話をかけてくれた。雨が止んだお昼過ぎに家族全員を乗せたトヨタのカローラで迎えに来てくれた。
旦那のローハンさんと奥さんのジャッキーさん、
13才のソラヤちゃんと長男で16才のハシン君、そして8才のタリック君の5人家族。
『足が痛くなったら遠慮せずになんでも言ってね』
みんなに心配してもらいながらバルバドスプライベートツアーが始まった。

 
                                                    コドリンドン大学



 最初に向かったのは、
Codrington College(コドリンドン大学)。
ここは
1745年に設立された、聖公会の牧師になるための勉強をする大学である。現在はプロテスタント信者が多くを占める国となったが、昔は聖公会が一番栄えていた宗教であった。ちなみに聖公会はカトリックとプロテスタントの中道の教会とされている。
正門の前には大きな池があり、蓮の葉とつぼみが水面を覆い尽くしていた。それを囲むように学生達は思い思いに会話を弾ませているようだった。




            面倒を見てくれるタリック



 最年少のタリックは面倒見が良い。歩くときは私の手を取り、『捕まって』と声をかけてくれ、ドアもしっかり開けてくれる、徹底したレディーファーストぶりである。若いのになかなか出来た小男だ。






                 モーガン・ルイスの風車


 車はBarclays Parkという大西洋沿いをひた走る。波の高いビーチではサーファー達が波乗りを楽しんでいる。海岸に沿うように、1ブロックはあるかと思われる広さの敷地に豪邸が建ち並んでいる。バルバドスは知る人ぞ知るリゾート地。故マイケルジャクソンも別荘を所有している。
リゾート地開発も活発で、現在はマリーナプロジェクトと言われる港の近くにコンドミニアムを作る工事が進められている。

 丘を登ると徐々に木々が多くなり、しばらくすると緑色に包まれた森の中へ入った。すると突然緑の中から巨大な風車が現れた。
Morgan Lewis(モーガン・ルイス)と呼ばれるこの風車は、国際保護建造物に指定されているカリブで唯一今なお動いているものである。昔はサトウキビの圧搾使われていたそうだ
雨が降り出したので、子供達とワイワイ騒ぎながら写真を撮って急いで車に戻る。




               マホガニーツリー


 丘をぐんぐん登り続ける。Cherry Tree Hill(チェリーツリーの丘)と呼ばれる所まで来た。丘の上からは巨大な森と波音が聞こえて来そうなほど轟く海と海岸線が見渡せる。
この丘は、高級家具などによく使われているマホガニーの木がバルバドスで初めて植樹された場所であり、辺りは不自然な方向に枝が伸び柔らかそうな葉をつけるマホガニーに囲まれていた。

『マホガニーはとてもエネルギーの強い木なんだ。隣にしばらくいるだけで不思議と力が湧いて来る』

 バルバドスの海を初めて見た時から感じていたことだが、この国の海や木や土はとにかくとても主張性がありパワフルである。
風や雨の刺激によって変わる自然の表情は時に息づかいが聞こえて来そうなほどである。同じように見える木や海でもその土地によって生き方の表現が違うのだと改めて感じる。

 最後は首都のブリッジ・タウンにある独立広場へ立ち寄った。
バルバドスには11の州があるが、今日はそのうちの9つの州を回った
。帰りに“シェフェ”と呼ばれるファーストフード店でハンバーガーを食べた。トリニダードを始め、グレナダ、そしてバルバドスなど私が訪れたカリブ諸国にはマクドナルドがない。聞くと、出店しても人気がなくすぐに潰れてしまうのだそうだ。インド系の人達が多いという理由もあると思うが、鶏が好きなカリブの人達には
KFCが絶大な人気を誇っている。

 家に着いたのはすっかり辺りが暗くなった頃だった。
『ねぇ、見て!
Seven Sisters!』
ソラヤちゃんが天を指した方向には藍色の夜空にミルク色に輝くプレアデス星団(昴)が見えた。
新年に見えるこの星々はギリシャ神話のプレアイデス姉妹に由来し、ポリネシアの地域では“マタリキ”(小さな目)と呼ばれ“新年”という意味も持っている。星を頼りに航海をする彼らが海へ出る時には欠かすことの出来ない星。心なしか距離が近くに見えた星を眺めながら、旅の出発前にギリシャ神話を教わっていた師匠のことを思った。
人は自分が出会う様々な景色に、自分の心の風景を同時にみるのだ。素敵な1日だった。

星はすばる。ひこぼし。ゆふづつ。よばひ星、すこしをかし。尾だになからましかば、まいて。—清少納言—





                 ローハンさん一家