現在滞在している、ペルーとボリビアの国境近い街、プーノで、10年前、電波少年という番組で南半球をヒッチハイクで横断したドロンズの大島さんから、彼らがお世話になった、チーズ売りの“ヨーラ”さんという、インディヘナの女性を捜して欲しいというミッションを頂いた。
彼らの所持金が尽きたとき、仕事と寝泊まりする場所を与えてくれた人である。
その時の放送分はこちら。
南北アメリカ大陸横断 プーノ編①
南北アメリカ大陸横断 プーノ編②
私がペルーの旅でお世話になっている、MICKY TOURのプーノ支店で働く、マリナさんに協力してもらい、プーノへ着いた初日から、マーケットでのヨーラさん探しを行った。
マリナにその時のVTR映像を見せた。
すると、彼らがヨーラさんと会った場所はすでに無くなっており、新しいマーケットが出来ているということだった。
さらには、当時売られていたような、2ソル(60円)のチーズは存在せず、今の相場は大体6ソル位で売られているという。
マーケットのおばさん達の情報では、土曜日の早朝に村からチーズを売りに来る人達がやって来るとのことで、16日の土曜日の早朝に全ての望みをかけてみることにした。
土曜日の早朝、太陽の柔らかい光が反射する湖を眺めながら、最初のマーケット、“Mercado Bella Vista”を訪ねた。
洋服やフルーツ、たくさんの店がひしめくマーケットで、チーズを売っている店はほとんどなかった。
ようやく見つけたチーズ売りのおばさんに彼女のことを訪ねたが、全く知らない様子だった。
人力のモトタクシーに乗って、引き続き街の中心にある、“Centro de Mercado”,“Mercado Laykakota”を訪ねたが、ヨーラさんという名前の女性は見当らなかった。
まして、名字が分からないとなるとなおさら手がかりは少ない。
メルカードのチーズ売り場で話を聞いてくれたおばさんの情報によると、クスコまでチーズを売りに出かけている人は、現在3人だけで、ヨーラさんという名前は聞いたことがないということだった。
10年も前のことで、職業が変わっている可能性もあり、街が活気づいていくのに反して、捜索は次第に難しくなっていった。
最後の望みをかけて訪れた、“Mercado Laika kota”では、チーズだけを売っているお店は数件しかなく、いくつかの店で彼女のことを訪ねたが、誰も“ヨーラ”という名前は聞いたことがないと答えた。
結局、これ以上探すことは難しく、後ろ髪を引かれる思いでマーケットを去った。
通りにびっしりと並ぶお店、その間をモトタクシーが駆け回り人々が行き来する。
たくさんの人達がひしめき合うマーケットで、どこかにいるかも知れない“ヨーラさん”の姿を探した。
彼女は今でも彼らのことを覚えているだろうか。
きっと、ふとした人生の瞬間に、思い出が頭の中を駆け巡っているだろう。
今回の捜索で、誰かと誰かの時間がぶつかり合う時に起こる、“出会い”という奇跡的な偶然に、深い意味を感じられずにはいられなかった。
私が歩いた道を、異なった時間に彼女も踏みしめているのだろうか。
ヨーラさんは今でも、チチカカ湖が一望出来る、日本から遥か遠い土地で、彼女の人生を送っていることだろう。