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同じものを食べているのに彼らは平気なのは、私がしばらく衛生的にも過保護過ぎる生活を送っていたためであろう。
今日はウィニーとタタがHilo Hilo(ウィロウィロ)という場所へ連れて行ってくれた。車を持っている彼らは、必ずどこかへ出かける際は、通り道に住む家を訪ね、車に乗って行く必要がないか訪ねる。
走っている道中も、歩いている人達を拾いながら進む。
この村には交通手段であるバスやタクシーといったものがないので、歩くしかない。しかし歩くといっても、ある場所からある場所へ移動するのは、かなりの時間と体力を使う。
車を持っている人は、こうして持っていない人達を助けている。
Liquiñeから約1時間半、Hilo Hiloに着く頃には、車の荷台はほぼ乗客で満員になっていた。
ここHilo Hiloには、大きな滝と、ジブリの映画に出てきそうなおもしろいホテルがある。森の中にぽつんと建つホテルの内装は、ほとんどが木で出来ており、その匂いと雰囲気が屋内でも森の中にいるような錯覚に陥らせる。数ヶ月前に予約しなければ部屋が取れないそうだ。いつかは泊まってみたい。
Hilo Hiloからさらに南東に10kmほど進んだ所にある、Puerto Fuiという湖の港に着いた。この湖を船で1時間半進むとアルゼンチンに着く。観光地になっていて、夏はたくさんの人達で賑わうという。
ここで車を停め、持って来たサンドイッチとマテを飲んだ。
帰りに火山記念博物館へ寄った。ここには、マプーチェの歴史が分かる、土器や、装飾品が展示してあった。村には博物館などないので、マプーチェの歴史や文化を知る、とても良い機会になった。
村へ戻り、朝、ウィニーとタタが車に乗せてあげた家族の家へ寄ると、鶏の卵を3つくれた。鶏を飼っていない彼らにとって、卵はとても貴重な食料である。
このようにして、村では、お互いが足りないものを補いながら生活している。
便利な場所に住んでいれば、卵を得るのに苦労することなんてそうそうないだろう。
スーパーへ行ってお金を払えばすぐに手に入れることができるからだ。
しかし彼らが生活する不便ともいえる環境は、彼ら村人の絆をより深め、人生をさらに味わい深いものにしている。
卵3つで、彼らはしばらく楽しい会話をし、お互いの体の調子を伺い、生活の様子を知り、何か助けられることはないか聞き合う。
彼らの姿を遠目で眺めながら、お金で簡単に交換出来るものより、価値のあるものがあることを私はこの時強く実感した。
ERIKO