午前11時、ANAKENAへ着くとそこは昨日訪れた全く同じビーチだった。休憩所は閉まっており、周りのお店もまだ1軒しか営業していなかった。
さっそくそのお肉を焼いている路店のおばさんに、アレハンドロさん家族の写真を見せると、『あ~、彼女はあそこで働いてるよ』と休憩所のトイレの方を指差した。やっぱり間違いない、もうすぐ会えるかもしれない。はたして彼女は
20年前のことを覚えているのだろうか。
待つこと
1時間、荷物を乗せた1台の白い車が駐車場へ入って来た。車から降りた彼女の横顔を見ると、なんとなく写真の女性と似ていた。彼女は車から下ろした荷物を抱えて、休憩所の方へ向かって行った。
私は
Sさんの写真とカメラを持って車から降り、彼女の後ろを追った。
『すみません、ちょっと見て欲しいものがあるんですけど・・・』
私が彼女に声をかけると、『どうしましたか?』と笑顔で振り向いた。
やっぱり昨日の女性だ。私は
Sさんの写真を取り出し、彼女にこの人を知っているか訪ねた。23秒沈黙が流れたあとに、彼女は手で顔を覆った。『Hirokoだわ!まあ、なんてことでしょう』
私が彼女に、
Sさんがあなた達家族のことを今でも忘れずに思っていて、どうしているかを知りたがっていたことを伝えた。
彼女は
Sさんがここへ来てドキュメンタリーの撮影をしていたときのことや、彼女と過ごしたとても良い時間を今でも大切な思い出にしていることを話してくれた。そして奥の方から家族の写真を取り出し、一つ一つ丁寧に写真の中の家族がそれぞれどうしているかを説明してくれた。

 

Sさんへ

アレハンドロさんの奥様、マルゲリータさんは、今もあのどこからも離れた孤島で元気に暮らしています。家族はSさんが島を去った今でも、あのとき一緒に過ごした時間のことを繰り返し話しているそうです。
彼女は、『こんなに月日がたった今でも、
Hirokoの心の中にまだ私たちがいたことが何よりも嬉しい。きっと彼女は島を去ってから忙しい毎日の中で島のことも、私たちのことも覚えていないだろうと思っていたわ。でもこうしてまたHirikoと繋がることが出来たことにとても感動しているわ。ありがとう』と、とても嬉しそうにしておられました。
娘さんは今、弁護士の資格を取るため、サンティアゴで勉強されているそうです。私にサンティアゴで会うように、連絡先を教えて下さいました。
Sさんの写真を渡すと、家族で一生大切にすると大事そうに胸に当てていました。マルゲリータさんは、とても瞳が素敵な女性ですね。
Sさんのお陰で初対面の私に心の底から溢れ出るような素敵な笑顔を見せてくれました。そして最後に、
Hirokoにまたいつか島に帰って来てちょうだいと伝えて』
と、おっしゃっていました。マルゲリータさんは今日も、モアイが立ち並ぶ真っ白い砂浜のビーチで元気に働いています。


 




私は今回マルゲリータさんとの出会いを通して、人は自分が思っている以上に繋がっていることを実感した。月日がいくら流れても、相手の姿は見えなくとも、心は繋がり続けること。辛い時、苦しい時、孤独を感じる時、それを感じているその瞬間にも、どこかで誰かが自分のことを温かく思っていてくれているかもしれないということ。

昨日は見知らぬ者通しだったのに、たった一人の存在の共有が、2人の出会いを全く違うものへ変えてくれた。人との素晴らしい出会いは、見る景色も、空気も、思い出もより美しいものに変えてくれる。
私とマルゲリータさんの間に、
Sさんという接着剤があったことで、私たちは感動的な時を過ごすことができた。人の喜びは自分にとって最大の喜びだと感じさせてくれるミッションだった。
Sさん、あらためて素敵な出会いを本当にありがとうございました。



 



※ イースター島で訪れた素晴らしい場所のハイライトはA&FさんのWeb Site内、Field Reportにて後日紹介させて頂きます。

ERIKO