非モテ男子の独り言 

〜映画『Notting Hill』より〜


【今日の台詞】

There’s a man who is allowed to kiss her in the world. 

ー彼女とキス出来る男がこの世にはいるんだぜ。


の台詞を聞いた時、深く共感した。非モテ男子だ!そう思った。寂しさの共感だ。寂しさを共感出来るとは、思いもよらなかった。台詞の彼女とは、スター女優の事で、美人である。思春期の中学生が同じ台詞を言うのと、いい歳した大人が言うのとは訳が違う。中学生が言いそうな台詞を大人が本気で呟く哀しさと言ったら堪らない


今日は、映画『Notting Hill』よりピックアップした。リスエヴァンス演じる非モテ男子スパイクの呟きだ。劇中の中で映画を観ていたスパイクはそこに登場するスター女優のキスシーンを観てのこの一言。

スパイクは主人公ではなく、主人公の友人で同居人だ。主人公は、ヒューグランド演じるウィリアムタッカー。ウィリアムは、旅行書専門の書店を営んでいる。実はこの映画、スパイクが劇中に観ていた映画のスター女優と主人公のウィリアムの恋愛模様を描いた話だ。スター女優は、ジュリアロバーツ演じるアナスコット。 

僕は今日、ウィリアムとアナの事は語らない。ウィリアムとアナの恋愛は、本編を観て貰えばわかる事だからだ。それにエレガントでキュートなアナを僕がここでどんなに形容しようとも敵わない


それよりも、スパイクについて語りたい。スパイクは、脇役だ。脇役が素敵な映画は、良い映画だと思う。

子供の頃は、ヒーローに憧れていて、〇〇ごっこをしていてもヒーローを取り合い、喧嘩になる事だってあった。しかし、この歳にもなると現実的になる。一般的によくあるような、電車であなたの隣の席に座ってスマホ片手にコクンコクン仮眠を取るような、そんな大人になっている僕がいる。そうなると、映画を観る視点も変わってくる。どうしても脇役に目がいってしまって、どうしても自分と重ねてしまうのだ。

同年代で、成功を掴んだ人もいるだろうし、美人と結婚した人もいる。何が幸せで、何が成功は、一概に決められず、人それぞれだから比較する必要もないかもしれない。しかし現実的に、この社会の中で主人公に、ヒーローに、思い通りの人生になった人は少ないと思う。

Notting Hill』は恋愛映画だ。主人公のウィリアムの恋愛を私たちは2時間4分をかけて追うのだが、その中で、突如、エマチャンバース演じるウィリムの妹ハニーがパーティーで婚約を発表する。家族がいる前で。婚約の相手とは、スパイク、彼だった。スパイクも嬉しそうな笑みを浮かべる。いつから、ハニーはスパイクに好意を寄せていたのか、私たちは知らない。てっきり、ウィリアムとアナの恋愛に集中していたからだ。この映画で自覚させられる事は、主人公だけが特別な人生ではないという事だ。スター女優の恋愛とゴシップとなると、業界各位騒ぎ立て、お金が動く。ゴシップ紙は、大儲け。それに代わって、ハニーとスパイクの恋愛は、静かだ。誰にも注目される事もなければ羨ましがられる事もない。


I’m just a girl in front of a boy, asking him to love her. 


アナがウィリアムに言う台詞だ。人を純粋に好きなる、愛するということは、社会的地位、見栄、金、ありとあらゆる社会で生き抜く鎧を脱ぎ捨て、ある意味で裸で愛し合う事が理想ではないのか。しかし、社会で生き抜く事無しに、愛はない。金がなければ愛し合う余裕がない。アナには、金もあり社会的地位もある。そんなアナの台詞に説得力はないのかもしれない。が、僕はそのシーンのアナの演技を見て、アナは鎧を脱いでいたと信じる事が出来た。


ここまで書いてきて、ふと思い出した。【今日の台詞】を。あれ、スパイク、やっぱりあなたはスター女優とキスがしたいですか?(

「あれは、ハニーと婚約する前の話で、ハニーに惚れられりゃ、ハニー一途だぜ。」と言いそうだ今回の僕の感想、どうも何処となく漂う非モテ男子臭がして来たので、この辺りで終わりにしたいと思う。