ブログネタ:夏と冬、どっちが元気?
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ブログネタ:カレーは甘口?中辛?辛口?激辛?
参加中私は激辛 派!
もう見かけない二人。
もう見ないようにしている。
夏場くらいからか、古い路線の大きな地下鉄の始発駅で、その二人は並んでいた。
男性は30代。スーツだけれど、朝からラフに袖をめくり上げ、ネクタイもタルっと結んであった。
女性も30代半ばだろうか。小柄な妊婦さんだった。かわいらしいマタニティドレスにお下げ髪。
ちょっと、その少女趣味には、行き過ぎの感があった。
ピンクのバッグにはぬいぐるみのマスコットとともに、マタニティマークが下がっていた。
始発駅で、始発電車が来るのを乗客はじっと4列に並んで待っている。
それも1回分、2回分、3回分と、お行儀良く並んでいる。
あまりの人の多さに初めて見る人は卒倒しそうになるだろうが、これが毎朝の光景で、社畜な私も、皆さんも、慣れっこになっている。
私が毎朝並ぶあたりにこの二人は居た。
私が前に並んだり、彼らが前だったりすることはあるけれど、おおむね、近くに並んでいることが多かった。
男性は私の苦手なキーキーしゃべるタイプで、背の低い妊婦さんに折れ曲がって話しかけるので、周囲の人まで、彼の話を間近で聞く羽目となる。
「そうそうそう。それでも、女かっつぅーの。生意気だよな?」
彼の話はだいたい、職場の女性の態度の悪さを彼女に同意して欲しいという内容だった。
彼女は、消え入るようなか細い声でなにやら彼に反論?やら同意やらをしていた。
ほとんど彼女の声は聞こえていなかったけど。
彼は混雑の列の中でこれ見よがしに彼女を引き寄せたり、大げさに守る仕草をしてみせた。
まー。自分の奥さんが自分の子を宿していたら、大概の男はそうするだろうけれど。
そう思って、不器用に大げさな彼女を守る彼の手を見ていた。
9月の半ばに、始発のためにいつものように並んで居たときのこと。
「台風の影響で○○駅で停電が発生し・・・・ただいま全線、運転見合わせとなっております」
時々起きる電車不通のアナウンスが流れた。
さぁって。どうしようかな。私もホームに残るか他線へ乗り換えるか、判断を迫られた。
振り返るとかの二人も不安そうに顔を見合わせていた。
と、周囲も気にすることもなく、彼が彼女を包みこみ、熱き抱擁・・・キス。
しかも長いぞ(をいをい)
へ。
まー二人の世界で幸せにやってください。
子どもが生まれたら、そんな事やってる場合じゃないぞ。
などと毒づいて、私は目のやり場に困るので、視線を携帯電話に落とした。
かすかに彼女の声がした。
「奥さんには、こんな事しちゃダメよ」
え?
な・なんですと??
「するわきゃないだろ?あんなブスと。バカかお前は?お前としかしないよ」
彼は相変わらず、裏返ったキーキー声を上げる。
「それよかさ、どうする?帰るか?オレんちカミさん居るなー。お前んちは?」
「うん。うちで・・・・」
こっくりと彼女が頷く。
「じゃ、こんな所に居るのはバカだしなー」
彼がぐるりと周りを見回し、私をはじめ、何人と視線で喧嘩をし、勝ち誇ったように言う。
さながら、彼女を守る騎士のようでもあった。
「今日は泊まってやるよ」
「ダメ」
肩を抱かれながら、彼女が彼をこづいて、改札の方へと消えていった。
あれって・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
あんなに堂々とされると、なんだかまじめな自分が恥ずかしく思えたのだった。
それから、もうあの二人とニアミスするのが嫌で別の場所に並ぶようにしていた。
だからあの二人とはもう顔を合わさないでいた。
先日、仕事が忙しくなって、夜10時過ぎに地下鉄に乗り込んだ。
どこかで見かけた顔だと思っていたが、親子連れでシートに座っているのが、父親がくだんの彼だった。
奥さんは、40近いだろうか。すらりと背の高い、上品な美人だった。
娘さんはローティーンで、多分、クラッシックバレエをやっているのだろう。
小さい頭にシニヨンを結って、母親似のきれいな子だった。
「そーやって、甘い顔するから、つけあがるんだよ」
彼は相変わらず、キーキーと声を張り上げる。
奥さんとお嬢さんは無言だった。
「だいたいさー、オレくらいになると、そんな事しなくったって・・・」
どんどんヒートアップする父親に、娘がぴしゃりと遮った。
「お父さん、人を貶すより、まず自分でやってみたら?」
賢そうな娘の顔を睨んで、彼が貧乏ゆすりを始める。
ああ。彼は、9月のあの時、あの小柄な妊婦さんの家に行って何をしたんだろう。
その日、この聡明そうな母子はどうやって父親を迎えたのだろう。
私は何か言おうと思って、奥さんの視線を探った。
奥さんはしっかりと娘の肩を抱き、外を眺めるばかりだった。
それから、彼は娘が不得意な事(跳び箱と、球技と、社会科が不得意らしい)を並べ、だからダメなのだと説いてみせた。
執拗な言い方に娘はめげて、母親に助けを求めた。
「あなた。いいのよ。まだ子どもですから。それを学ぶために学校へ行っているのですから」
娘は母に静かに抱き寄せられた。
奥さんは娘を見事に守ってみせた。愚かな父の手から。
そんな様子を見て、彼は貧乏ゆすりを続け、せわしなく、携帯電話を引っ張り出し、いじくり回し始めた。
あの事をこの奥さんに伝えるべきであろうか。
この男が毎朝、抱き寄せていたのはどんな女だったか。
言おうかどうしようか。
悩んで居ると、やがて電車は終点にたどりついた。
いつもこの父親が、小柄な妊婦を守っている始発駅だ。
明日の朝には、また同じ事をするのだろうか。
また周囲の目もはばからず、キスをするのだろうか。
なんとも。
私は何もせず、黙って電車を降りた。
その家族も黙って電車を降りた。
何かができるわけでもなく、どうにかなるわけでもなかったが。
ただ、娘を守る母の手はとても美しく見えた。