今日は、
デイズ・オブ・グローリー
を観ました

囮としてしか使われず、
平等な権利も与えられない
軍人たちの儚さや切なさとか
虚しさみたいなものが最初から
最後まで同居するような映画で

いつも観ているような激しい
戦争映画とは全く違いました。

この映画は、
アカデミー外国語映画賞
にノミネートされたほか、

カンヌ国際映画祭では
主要キャスト5人が
主演男優賞を同時受賞
して話題を集めました

モンテ・カッシーノの激戦

アルザスでの独軍掃討戦など、

迫力のある戦闘シーンは
描かれていますが、

この映画では、第二次大戦
を自由フランス軍の一員
として戦った
アルジェリア現地人
の部隊を中心に
描かれています。

ムスリムたちが、フランス軍
兵士としてどのように大戦に
参加し、惨い戦いを経験して
いったのか、

「原住民」であるがゆえに
どのような差別と蔑視に
耐えなければならなかったのか、

を描いています。

「原住民」としての登場人物は5名。

1943年にアルジェリアやモロッコ
で募兵に応じた若者たちです。

・サイード
　貧困から脱出するために引き
　止める母を振り切って志願。

・ヤシールとラルビの兄弟
　金のために志願。
　弟のラルビの結婚資金を貯める
　ことが目的。

・アブデルカデ
　「原住民」としては頭脳明晰で
　兵長に抜擢されフランスの
　「自由、平等、友愛」の理念を
　信奉していた。

・メスード
　射撃に才能を発揮して狙撃兵
　として活躍。

彼らはフランスを解放するために、
マルチネス伍長に率いられ

第7アルジェリア歩兵連隊
としてヨーロッパに進撃を開始。

彼らの前に立ちふさがるのは
独軍ですが、

フランス軍幹部にとっては
「原住民」などは消耗品以下
にすぎません。

1944年のイタリア
モンテ・カッシーノの激戦
では、

彼ら原住民部隊は最前線で
戦わされるのですが、

独軍を発見するためのただの
囮として使われるのです。

次々に戦死を遂げてゆく
「原住民」たち。

フランス軍幹部たちは後方の司令所
でその状況を観望しながら敵陣を
掌握し、攻撃の態勢を整えます。

移動のための船内では、
黒人兵がトマトの支給を拒絶。

お前たちの分はない、
というのが軍側の言い分です。

「フランスのために戦う
われわれを差別しないで
ください、敵の弾が無差別
であるように」

というアブデルカデの抗議
が胸を打ちます。

さまざまな曲折を経て部隊は
アルザスへと進撃します。

雪景色の中などでの激戦を
経験させられながら、
昇進と休暇はフランス人兵士
だけが享受し、

「原住民」の兵士には
それらの恩典はまったく
拒まれたままです。

アブデルカデをはじめ不満を
あからさまに表明する
「原住民」兵士たちに対し、

司令官は行賞を
「名誉にかけて」
約束しますが、

司令官は「原住民」との約束
など守ろうとも思っていません。

その司令官の約束を信じる
アブデルカデたちの素直さ
には胸が痛みます。

マルチネス伍長によれば、

昇進や休暇は

第一にフランス人兵士、

第二にピエ・ノワールの兵士

に優先的に与えられ、

「原住民」兵士は最後なのです。

マルチネス軍曹はアルジェリア
のプア・ホワイトである
「ピエ・ノワール」の出身。

そして誰にも秘密にしているが
母親はアラブ人なのです。

したがって本国のフランス人と
現地のアラブ人との中間に位置
する彼にとっては、

フランスの
「自由・平等・友愛」
の理念への信頼と、

それらの理念がことごとく
裏切られている植民地の現実
のジレンマにあって、

彼の「下士官」という階級も
こうした引き裂かれた
状態を象徴しています。

ちなみに、19世紀の普仏戦争
の結果としてアルザスが
ドイツに割譲され、

追い立てられたフランス人の多く
がアルジェリアに入植しましたが、

その子孫が
「ピエ・ノワール」
なのです。

マルチネス伍長にとって
アルザス進撃はまさに
故郷の地への帰還でした。

その
アルザスでの独軍掃討戦。

1945年1月15日。

独軍の抵抗に遭遇し、
「原住民」兵士たちは次々と
戦死を遂げていく。

メスードも、

サイードも、

ヤシールも、

すべて死にます。

負傷したマルチネス伍長も
独軍兵士に殺されます。

唯一生き残ったアブデルカデは、
戦闘後に訪れた司令官に約束の
履行を迫るが、近寄ることすら
できません。

南仏上陸時の26万7千人の
フランス軍のうち13万を占めた
アラブ人兵士たちの戦いの、
最後の結末がこれです。

60年後のアルザスを訪れて
かつての戦友たちの墓に
詣でる老いたアブデルカデ
の姿が映し出されます。

そしてパリ郊外の移民専用団地
の貧しい部屋にひとり戻ってゆき
横たわるアブデルカデの姿で
物語は幕を閉じます。

エンディング・ロールでは、
アルジェリア独立戦争の
さなかである1959年に
フランス政府はこれらの
植民地人の兵士たちへの
恩給支給を停止したこと、

そして2002年には満額支給
が決定されましたが未だ
実施されていないこと
が語られています。

■ピエ・ノワール

アルジェリアに入植したフランス人
貧困層で「黒足」の意

■モンテ・カッシーノの戦い

第二次世界大戦中、
1944年1月17日から5月19日にかけて

イタリアのモンテ・カッシーノ
で行われた戦い。

連合軍のイタリア戦線における
グスタフ・ライン(カッシーノ周辺)
の突破およびローマ解放のために
企画されました。

■アルザス＝ロレーヌ

フランス共和国北東部のドイツ国境
に近いアルザス地域圏（エルザス）
とロレーヌ地域圏（ロートリンゲン）
のうちモゼル県を合わせた地域。

鉄鉱石と石炭を産出するため、
しばしばフランスとドイツとの間で
係争地となったことで知られます。

第二次世界大戦以降はフランス領
となりましたが、

中心都市であるストラスブールには、
それ以後、欧州の主要な国際機関が
多く設置され、国を超え、欧州統合
の象徴的な地域となっています。

アルザス・ロレーヌは
元々ドイツ語文化圏に属し、

特にアルザスで話される
アルザス語は南部ドイツ語の
方言であるアレマン語の一つ。

元来はドイツの前身である
神聖ローマ帝国の支配下にあり、

住民の大多数はドイツ系のアルザス人
（アレマン系）ですが、

『ツァーベルン事件』で

ドイツ人がアルザス人を侮辱する
事件が起こったことをきっかけに、

現在のアルザスの住民は
「ドイツ人」という概念よりも、

民族独自の「アルザス人」
という意識が強くなりました。

1940年にナチス・ドイツが
第二次世界大戦で再びフランス
を破って、首都パリを占領すると、

同年8月7日、再度
アルザス＝ロレーヌ
を自国に編入しました。

しかし、1944年にドイツに抵抗
を続けていた自由フランスが
パリを奪還して新政府を樹立すると、

この地域からドイツ軍を追って
再びアルザス＝ロレーヌを領有
して現行の国境となりました。

■自由フランス

第二次世界大戦中にドイツによる
フランス占領に反対して成立した、
連合国側の組織。

亡命フランス人による独自の
自由フランス軍を率いるとともに、

フランス国内のレジスタンス活動
を支援しました。

1942年7月21日からは
「戦うフランス」
と改称されています。

1940年のドイツ軍の侵攻に
よるパリ陥落後の6月17日に

イギリスのロンドンに亡命した
前国防次官
シャルル・ド・ゴール将軍は、

6月18日にはイギリスの公共放送
BBCを通じて歴史的な演説を行い、

国内外のフランス人に対独抵抗運動
（レジスタンス）を呼びかけました。

■自由フランス軍

自由フランス軍の多くは
フランス人から成っては
いませんでした。

西アフリカの徴集兵。
フランス外人部隊、
モロッコ人、
アルジェリア人、
タヒチ人などで構成。

1944年9月までに、
自由フランス軍は、
560,000人規模と
なっていました。

この数は年末までに100万人
規模にまで増加しました。

フランス軍は主にアルザス、
アルプス山脈および
ブルターニュ地方で戦いました。

1945年5月、ヨーロッパでの
戦争は終結し自由フランス軍は
130万人規模にまでになっており、

次は日本との戦いが待って
いましたが、その前に終戦
となりました。

差別と蔑視との戦い