いよいよ高校編に突入。
以前も書いたが、高校入試は比較的すんなりとクリアすることが出来た。成績も良かったので、普通に地元の進学校に入学し、江ノ電で通学するという、青春ドラマのような生活が始まった。
さっそく部活動を選ぶことになったのだが、中学の時は吹奏楽部だったので、そのまま吹奏楽も選択肢にあったけれども、やはり自分の中ではマンガに対する想いが強かったこともあり、マンガ研究部に入部することを決めた。
放課後、おそるおそるマン研の部室(といっても、空いている教室を借りているだけ)に行き、そこにいた先輩たちに「マン研に入部希望です」と告げると、部長らしき女性がとても喜んだ様子で「おお~!!」と出迎えてくれた。
自分の他にも、3人ほど入部希望者が来て、それぞれ自己紹介をしたあと、マン研の活動内容について説明を受け、帰りに画材屋に寄って、マンガを描く道具をそろえることになった。
先輩たちに教えてもらいながら、墨汁やGペン・丸ペン、ケント紙など、とりあえず最低限の道具を買い揃え、これから始まる部活動の日々を想像しながら、新入部員である同学年の仲間たちとウキウキしながら語り合ったことを覚えている。
次の日、部長から「とりあえず、一度自分で何かキャラクターでも描いてみて」と言われ、これまでノートの端に見様見真似で適当に描いたことしかなかった自分は、人気漫画家のキャラクターをなんとか描いてみたのだが、新入部員の中では一番ヘタクソで、とても恥ずかしくて見せられないような絵しか描けなかった。
他の新入部員たちは、みなそれぞれ個性的なキャラクターを描いていて、画力もそれなりにあって上手だったので、たぶん子供のころからずっとマンガを描いたりしていたんだと思う。
部長を始め、副部長や他の先輩たちも同じように鉛筆でラフを描いていて、出来上がった絵を見せてもらうと、さすが先輩、ものすごく上手で、特に部長と副部長の二人は、同人誌での活動もしていたらしく、プロ並みに画力があってレベルが段違いであった。
先輩はともかく、同学年の仲間たちにも劣る画力しかなかった自分は、「単に好きなだけじゃだめだ、きちんと努力して絵の練習もたくさんしなければ」と、かなりショックを受けて、その日から毎日、帰宅してから寝るまで何度も何度も絵の練習を続けていった。
いきなり上手くなることはないのだから、まずはマンガ家のトレースから始めていった。短時間でそれなりに上手くなるには、真似をすることが一番早いと思ったのだ。もちろん、好きなマンガ家の影響はとても受けることになるけれど、多かれ少なかれ、みんな自分好みのマンガの影響は受けるものなのだ。
例えば、ドラゴンボールが好きならば、どうしても鳥山先生の絵に似たようなキャラクターを描いてしまうだろう。なかなかオリジナル性を出していくのは難しい。でも、取っ掛かりは人真似でもいいと思う。
一番大事なのは、「好きであること」なのだ。
「好きこそものの上手なれ」
結局、これに尽きるんだ、何事も。
好きなことをしているときは、時間も全く気にならないし、いくらでもやっていられるし、食べることも寝ることもそっちのけで没頭する。そういうものなのだ。
先輩たちからマンガを描く知識を得ながら、絵もどんどん上達していき、2年生になる頃にはそれなりにマンガとして見られるくらいになっていた。
もう、毎日が楽しくて仕方がなかった、そういう1年間であった。
続く。