今日はうつになったきっかけをお話ししようかと思います。
うつにかかった人に対して、かかっていない健康な人がよくおっしゃるのは、
「気持ちが弱いからだ」
「鍛え方が足りないからだ」
という言葉。
正直、病気になった当初は「そんなことない!」と強く打ち消していたのですが、大分回復してきた今となって考えると、それはそれで当てはまる部分もあると思います。
誤解しないで欲しいのですが、
「気持ちが弱い」「鍛え方が足りない」というのは、決してその人に耐える努力が足りない、ということではないと私は思っています。
むしろ辛い現実を耐えに耐えて頑張りすぎて、限界を超えてしまったから、うつになってしまったのですから。
私が言いたいのは、苦しいことに直面したとき、その苦しさを「上手に」コントロールするための術=ストレスコントロールを知らなければ、ストレスと共生することはできないということ。
その能力の有無について言えば、それを持っていなかった私にはまだまだ鍛え方が足りなかったし、その能力を持っている人を羨んで、「そんな能力は一部の人しか持っていない」と逃げていた私は、やっぱり弱い部分があったのです。
昔、ある辛い出来事をきっかけに、私は自分自身に対して「価値などなく」、「罪深く」、だからこそ「どんなに辛くとも、正しいことを貫かねばならない」と言い聞かせていました。
仕事でも、自分だけでなく周囲に対しても「正しさ」を要求し、それが原因で周囲からは「昔は良かったのに」「厳しすぎる」「生意気だ」「馬鹿にしている」と散々な評価を受けました。仕事で成果は上げても、周囲の気持ちや立場をまるで無視したやり方に、理解も賛同も得られるはずはありませんでした。
私自身も、正しいことをしているはずなのに、ただ後悔と苦痛だけが押し寄せて、辛い日々が続いていました。
でも、それが自分にとっての贖罪なのだと信じていましたから、どれほどストレスを感じていても、ただ、黙って耐えるだけでした。
思えば、こういった極端な思考や、耐えることでしかコミュニケーションを取ることができない部分も、ストレスを生み出すそもそもの要因だったのですが、当時の私に、それは理解できていませんでした。
そんな風にして生きてきたある日、その頃続いていた夜10時過ぎまでの残業を黙々とこなしていたときのことです。
急に、首になにかがずれるような違和感を感じました。
途端、気持ち悪くなってしまい、一瞬何が起こったのか解りませんでしたが、それよりも仕事が大切、と自分の体をそっちのけでした。
それから背中の痛みに悩まされることになるのですが、当の私は「ただのこりだから」と深刻に考えず、それから半年して、左腕のしびれと麻痺が出るようになって、初めて医者にかかりました。
「頸椎症性神経根症」。それが病名でした。
医師にはすぐに休養を勧められましたが、職場からは、「産業医との面談は認めない。診断書の提出も認めない」とはっきり言われました。当時私の有給休暇は10日ほど。自分の休暇だけでは三週間などとても休むことはできませんでした。
医師からは全治三週間、といわれているのに、一体どうすれば治すことが出来るのか。私は混乱しました。
仕事も減らされず、勿論周囲の理解もなく、症状は辛くなるばかり。休むと、呼び出されて「休まれるだけで迷惑だ」と言われました。
結局、強引に医師の診断書を提出したのですが、勝ち取れたのは一日2時間の勤務軽減だけ。仕事も軽減されず、置かれた立場は更に厳しいものになっただけでした。
自分のことは、自分で何とかするしかない。そう思って、私は整形外科だけでなく、鍼灸や整体にも頼りました。
全治三週間の病は、結果的に、三ヶ月の期間を必要としました。
ようやく回復した私に、人事担当が浴びせた言葉は、
「全治三週間が結局三ヶ月になった。それについて、何か言うことはないか」
その時思いました。
ここでは、使えなくなった人間は、必要ない。
なら、これまで私がやってきたことは、いったい何だったの?
何だか心がぼっきり折れてしまった気がして、それからというもの、仕事に対しても、生きることに対しても、意欲も、意味も、自分の価値も、何もかも解らなくなってしまいました。
それから3ヶ月後。私は原因不明の下痢や不眠に悩まされはじめ、内科や胃腸科をはしごしました。
そのうち体重は15kg落ち、自分では制御できない「死にたい」という衝動にくるしめられ、「このままでは本当に死んでしまう」とそれまで考えたくもなかった心療内科の門を叩きました。
診断は、やはり「うつ」でした。
「こんなになるまで我慢して、つらかったでしょう。」
そう医師に言われた瞬間、涙があふれ出して止まりませんでした。
それまで「うつ」だなんて考えたくなかったはずだったのに、そうはっきり言ってもらえて、これでもう大丈夫、私は助かるんだ、そう思った瞬間、ひどく安堵したのを覚えています。