東京国際歯科六本木 COVID-19感染対策チーム続編です。

所在地：東京都港区六本木（最寄駅麻布十番）

本日、都内では１日の感染者が100超えになり、都が確保している

病床数500ベッドが満床になっている状況です。

歯科医療者として、歯科医院として私たちができることを慎重に状況判断し、

日々の診療にあたっております。

本日、歯科医師会からのマスク（サージカルマスクではない）が届き、

当院スタッフへ配給しました。

来週には、N95マスク２枚が配給されるようです。

今後どのように消毒液やマスク、グローブを確保していくか、院内で早急に話し合い、

情報をアップデートし診療方針を立て直している毎日です。

昨日、ブログでアップした内容をさらに詳しく解説したいと思います。

図１

例えば、この図１で言うと、右側半分がオーバーシュートになった場合の対応について患者のタイプ別の場合分けがされています。

左側半分はまだ感染者の割合が少ない現在の対応です。

赤は、発熱や咳を伴う患者さん、

それ以外は、熱や咳を伴わない患者さんの場合です。

オレンジは、歯科的な緊急治療がある患者さんですから、

歯科医院としては歯科治療を必要があります。

アメリカでは、ADA（アメリカ歯科医師会）が、図２のように

歯科的緊急性のある患者さんだけを診察するようにと声明を3月16日に出しています。

図２

緑や青のタイプの緊急性のない患者さんは治療を３週間後延ばしにしています

（今は診ていません）

赤のタイプの患者さんには、まずは病院に行かれるようにお勧めをしているわけです。

従って、オーバーシュートになったアメリカではオレンジのタイプの患者さんのみを、

非常に慎重な対応をして診察しているということですね。

それが米国で歯科医師として仕事にあたられている嘉村先生のビデオに表れています。

実際にその対応は、武漢の病院歯科での対応と同じです。

そして、その歯科的緊急性のある患者さんとは、どういうタイプの患者さんかというと、

図３のような場合です。

図３

大きく分けて３つに分類されています。

１つ目：歯科的緊急状態

＊出血がコントロール出来ていない場合

＊感染等で蜂窩織炎の状態で患者の気道確保が難しい状態になっている場合

＊外傷による顔面の骨折等で患者の気道確保が難しい状態になっている場合

２つ目：緊急的な歯科治療が必要な状態

＊歯髄炎によるひどい痛み

＊智歯周囲炎のひどい痛み

＊術後性の骨炎、ドライソケット

＊膿瘍や局所的な細菌感染による痛みや腫れ

＊歯牙破折による痛みや軟組織への損傷

＊歯牙外傷（脱臼・脱落）

＊医科治療のために必要とされる歯科的前処置

＊最終補綴物装着前に暫間修復物を無くしたり、壊れたり、歯肉に損傷が生じている場合

＊異常な組織の生検

３つ目：その他の緊急性のある状況

＊広範囲にう蝕が存在、あるいは修復物の問題で痛みが生じている場合で

　仮の修復テクニックで処理できる場合（フッ化ジアミン銀やグラスアイオノマー）

＊縫合糸除去

＊放射線治療を受けている患者の義歯調整

＊痛みを経験した患者で根管治療を受けている場合の仮封材の交換

＊矯正治療のワイヤーや装置が口腔粘膜に突き刺さっているとか潰瘍になっている場合

以上が、オレンジ色に属する患者さんで、細心の注意を払って治療をしていく必要があります。

一方、緑や青の患者さんとは

＊定期検診（定期的な診査・検査・X線）に通っている患者さん

＊定期的にクリーニングや予防的に通っている患者さん

＊矯正治療中の患者（上記の緊急性がない）

＊症状のない歯の抜歯予定患者

＊修復治療や症状のないう蝕の治療

＊審美的な治療

このような治療予定の方の予約は先延ばしにします。

以上はオーバーシュート（感染爆発）があった場合の対応で、

詳しくは武漢の病院歯科の文献（前のメルマガ参照）にある通りです。

アメリカの嘉村先生が流されていたビデオの解説は、

オーバーシュートがあった場合の、このオレンジの患者さんに対してのことです。

アメリカでは、ADAからの通達で、歯科的緊急性のある患者さんは、

歯科医院で治療を受け持ってくれとお願いが出ています。

そうしないと大きな病院歯科での医療崩壊が起こると考えられるからです（図２）

さて、現在は（図の左側）

歯科医院に来院される方は上記のような対応を行うほど

感染が拡大しているわけではありません。

ただし、「３密：密閉・密集・密接」に気をつけて対応された方が良いでしょう。

従って、図左の一番上の患者さんには来院前に電話等で確認し、

熱・咳がある方には、まずは全身疾患の管理をして頂き、歯科医院には来院してもらわない。

また来院時にはアンケート・検温を行うことで（図４）

*風邪症状、熱、渡航歴、コロナ感染の疑いや濃厚接触など

図４

来院前の電話問診と来院時のアンケート記入と問診にて

院内感染のリスクを下げるべきでしょう。

来院される患者さんには、周り（職場や家族）に感染者やPCR検査を受けた方がいないかどうか、も聞きます。

（赤の患者さんは東京国際歯科六本木では治療しないことにしています）

オレンジと緑と青の患者さんは、皆、症状はありません。

オレンジは歯科的緊急性のある患者さんで熱・咳なし、本当は感染している方。

緑は歯科的緊急性がない患者さんで症状はないが、本当は感染している方。

青は歯科的緊急性がない患者さんで症状もないし、感染もしていない方。

実際にはそれぞれ患者さんのタイプが異なりますが、区別は難しいと思われます。

オレンジは歯科的緊急性がある患者さんで、確率は低いですが

不顕性感染している患者さんかもしれません。

その確率は現在の日本ではPCR検査を受けた方の６％程度と考えられますので、

ずっと低いでしょう。

東京都の場合だと、人口が1200万人のところ、3000人程度の検査が行われ、

450人の陽性者が検出されています（図５）

図５

日本の平均より高い（15%）ですね。

ですが、人口全体から考えれば、０.００３７５％です。

いずれにしても、患者さんを受け入れるのであれば、図６のように

治療は窓を開け換気の良い部屋でおこなう。

図６

個室で２箇所の窓を開放

待合室は密集しない程度に予約を入れて、治療前にはマウスリンスをしてもらいます。

治療中は、

水滴やエアロゾルが飛ばないように注意して治療します。

そのため、５倍速やタービン、超音波、エアーをかけるのを必要最小限にします。

もしも使用する場合は、バキューム、排唾管、口腔外バキュームを最大限に用います。

術者は粘膜を防護します。

防護服やマスク、帽子、ゴーグル等を用いる場合は使用後の処理に気をつけます。

患者さんが触れるところは良く消毒します

図８

今後、東京都あるいは政府が緊急事態宣言を出された時は、

どのように対応すべきなのかを、各歯科医院で早めに決めておくとよいのではないでしょうか。

<続く>

EPSDC GROUP

東京国際歯科六本木

COVID-19 感染対策チーム

2020.4.4

朝MTGより