こんばんは。今回は、2回目に会った時のことを書いていこうと思います。いままで会ってきた人とはどことなく違う雰囲気、余裕。今となってはその正体はわかっているのですが、この時はまだどうにも慣れていませんでした。

​余裕

5月の頭くらいでしょうか。初めて会った日からおよそ1週間後、私は学校帰りに寄っていいかと訊きました。もちろんいいよ、と言ってくれました。


今思えば、Aさんの時間に自由度のある働き方でどれほど助かってきたか。平日の夕方に毎週のように家に行くなんて、正社員として朝から晩まで働いていたらとてもじゃないけれどできなかったでしょう。結局のところ、その働き方もAさんの決めている生き方によるものなのでしょう。私は勝手にそう思っています。


駅まで迎えにきてくれました。シンプルにまとめた服がよく似合っていました。少し肌は荒れているけれど、それでもAさんは格好良かった。容姿が良い、というのもあるけれど。それ以上に、よくわからない安心感がAさんの顔を見ると湧きました。身長は平均より少し高いくらいなのに、私にはとても大きく見えました。Aさんと歩く隣は何よりも安心できました。


住宅街の細い道。急に人通りが少なくなります。道はまったくと言って良いほど覚えられていませんでした。気づいたら、見覚えのあるアパートの前に着いていました。Aさんに気を取られすぎていたからでしょうか。


どうぞー、と言ってAさんはドアを開けました。タバコの匂いが鼻を突きました。それが私にはどうしようもないほど心地よかった。ひたすらに安心できました。体から力が抜けていきました。


部屋の隅で正座して小さくなっている私を横目に、Aさんは布団に入って、おいで、と手招きしました。人の家です。今でこそ上がってすぐにご飯を作り出したりできますが、初めのうちはどうしたらいいかわかりませんでした。そんな私をAさんは優しく導いてくれました。


おいで、の声がどうしようもなく私を安心させました。素直に布団に入ってAさんの隣にぴったりと身体を沿わせました。背中に腕を回してぎゅっと力をこめました。Aさんは同じくらいの力で抱きしめ返してくれた。大きな手のひらがゆっくり私の頭を撫でました。背中をとんとんと撫でてくれました。何も言わなくても、私のしてほしいことを見透かしたかのようにAさんは私を優しく包み込んでくれました。私に何か求めるでもなく、ひたすら温かさをくれました。Nのしたいことしよ。その言葉通り、何も考えずに身を任せることができました。


​悪い癖

私の悪い癖。それは、信頼すると身体を求めたくなることです。身体を求めるといっても一口に最後までそういった行為をするということではありません。(私は責任が取れる年齢になるまでは最後までそういった行為をするつもりはありません)それでも、もっとその人を深く知りたい。もっと触れたい。もっと触れられたい。そう思ってしまうのです。


キスしたい。そう、思いました。今までだったら、何も言わずにできた。たぶんそれは相手が私の身体を欲しているというのが少なからず表に出ていたからでしょう。しかしAさんからは全くと言っていいほどそれを感じませんでした。俺も男だからしたくないわけじゃないし、Nがしたいならする。確かにそうは言われました。けれど、したくないのだったら自分からそういうことは求めないし、するつもりもない。こうも、言われました。だからでしょうか。積極的に求められていないことをするのに抵抗があったのです。


今思えば、積極的に求めていないというよりかは私に無理させたり傷つけないための言い方だったのだとわかります。したくないことを気を遣って無理にさせたくない。きっとAさんはそう思っていたのでしょう。なぜそう思ったかは、これから出していく記事をお読みいただければわかっていただけると信じています。


ねえ、キスしていい?


私は勇気を出して言いました。いいと言われることはわかっていました。それでも、訊かずにはいられなかった。どこまでも余裕があるAさん。何をして欲しいのか、何をして欲しくないのかわからなかった。適当に関わっちゃダメだ、と思いました。Aさんは私のことをちゃんと考えてくれている。体を触るでもなく服を脱がせるでもなく、ひたすら抱きしめて頭を撫でてくれた。自分の欲求は二の次で私をどうにか安心させて満たそうとしてくれたのだ、と後から思い返して涙しました。


そっとAさんの唇に触れました。柔らかかった。すると、上唇をついばむように何度もキスをしてくれました。首の後ろに手を回して、しっかり頭を抱え込んで。ゆっくりと私の唇に柔らかさを教えてくれました。舌先でAさんの唇をつつきました。少し冷たい舌はぴったりと吸い付いてきました。Aさんでいっぱいだった。


これが最初だったら、おそらくAさんの印象はまた違うものになったでしょう。なにも言わずとも私の求めていることに応えてくれた。私のことを考えてくれた。その上でもっと触れたい、と私が望んだのです。それに、彼は応えてくれた。仮にAさんが初めから望んでいたとしても、私が望んだタイミングでそれをしてくれたことには変わりありませんから。


帰り、駅まで送ってくれました。電車のなかで私は通知に気づきます。


「来てくれてありがとう。気をつけて帰りな。またいつでもおいでね」


しんどいなって思った時はいつでも来ていいから。いくらでも頼ればいい。迷惑なんて思わないから。その言葉に、私はどれほど救われたでしょう。Aさんのおかげで、私は友人と遊んだ帰りに気をつけて帰れよーとLINEすることが増えました。


​次回

最後までお読みいただかありがとうございました。次回はAさんの性格について詳しく書こうと思います。もしかしたら初めて泊まった時のことになるかもしれません。お楽しみに。