彼との間では、お互いに行事には関与しないのが不文律になっている。
期待もしないから、がっかりすることもない。
元より家庭を壊さないというのが「はじまり」の条件だった。
それなのに何故だか、2月14日は逸脱しがち。
2020年…未だ一線を越える前の頃。
意外と甘い物が好きと知ってチョコを用意していた。
仕事上がりに、いつも通りのお疲れLINEがきて。
逢えるかな?なんて、淡い期待にそわそわしている私から、何を言うとも無しのタイミングで、「今日は真っ直ぐ帰る」と言われてしまった。
寂しくて、悲しかったけれども、至極当然のことで。
何も言えなくなって「気をつけて帰ってね」と返した。
2021年…前回の苦い記憶があったから、何も準備しなかったし、すっかりそんな行事も忘れていた。
微妙に14日とずれてたと記憶しているけど、仕事の帰り道、行き付けのバーに呼ばれて待ち合わせた。
週中での逢瀬に「珍しいね?」なんて呑気に言いながら、カウンターに置かれたチョコを見てハタと気付いた。
彼なりに時間を作ってくれたのだ。
「…だって、会いたいかと思って。」
彼の横顔が少し、拗ねていた。
2022年…前回を教訓に、前々回に懲りもせず。
どうやったって出社の彼と、在宅勤務の私と、逢える筈もないのだけれど準備した。
結局、コロナで外出自粛もある中で、不自然に夕方から家を空けることもできなくて、やっぱり逢えなかった。
代わりに、彼の仕事上がりの時間を見計らって、オンラインでカフェチケットを贈った。
どうしようか、ずっとあれこれ悩んでいたけど。
「ありがとう」って喜んでくれたのが、自分の中でも殊の外、嬉しかった。
3年越しに、喉に引っ掛かっていた魚の小骨が取れた気分。