こんにちは


今日は、前回の続き、貸借対照表上の一見して見えない問題点の

あぶり出しについてお話します。


【在庫】

前回お話しました【売掛債権】と同様に、月次の平均売上高と比較

しましょう。

また出来る限り過去3期分で比較しましょう。


業界によって利益率は異なりますが、少なくとも月商を上回る金額

になっていますと、注意が必要です。

なぜなら、その在庫を売り切るのに数ヶ月かかるということであり、

相場商品の場合は価格変動リスク、また流行商品の場合は陳腐化

など、在庫を長く持つ事は通常リスクを増やす事になるからです。

さらに、既に不良化した在庫が含まれている可能性もあります。

この場合、単にバランスシートが劣化するだけでなく、処分する際

には帳簿上の金額に加え、処分に要する費用など将来のPLにも

負の影響を与えます。


では、前回同様、簡単な数字をあげてご説明します。


■売上高 (単位:百万円)

前期   前々期  3期前

240   216    180


*月次の平均売上高(上記を12等分)

前期   前々期  3期前

20    18     15


■在庫

前期   前々期  3期前

28    25    12


これだけでは、あまり違和感を持ちませんが、在庫÷月次平均

売上を算出してみましょう。


■在庫÷月次平均売上高

前期   前々期  3期前

1.4   1.39   0.8


3期前に比べ、前々期からいきなり0.6ヵ月分程度増加したこと

がわかります。

仮に、前期、及び前々期の売掛期の中に、10百万円の不良在庫

が含まれていたとします。その部分を除きますと、


■在庫

前期   前々期  3期前

18    15    12


■在庫÷月次平均売上高

前期   前々期  3期前

0.9   0.83   0.8


このように、違和感のない数字となります。

つまり、在庫÷月次平均売上高が増加した背景に、不良在庫の

存在が可能性として浮上します。

もちろん、他に原因がある場合もありますから、このような仮説

を携えた上、相手先に対し、理由を確認することが重要です。


在庫をたくさん保有している会社にとって、在庫の不良化は

必然的に起こり得ます。

十分な在庫を持たない事で商機を逸する場合もありますから、

ある程度の不良化を織り込むことも経営上、必要な考え方だと

思います。


ただ、一番恐ろしいことは、長くそういう仕事に携わっていると、

それが当たり前となるため、資産の中に不良在庫が含まれて

いることに対する問題意識が希薄になることです。

不良在庫の処理において、正しいタイミングでの処理ではなく、

会社業績を考慮したタイミングでの処理に流れがちなのです。

今期は赤字になりそうだから、不良在庫の処分は来期まで

持ち越そう、こういった考え方がマネジメント層に留まらず、

営業現場にまで浸透しまっている組織は少なくないと思います。

逆に、マネジメント層が正しく実態を把握しようとしていても、

現場の判断で正しい報告があがらないこともあるでしょう。


私はこれまで幾つかの事業において不良在庫の処理に苦し

んだ経験があります。

その為、どうしても財務評価において、在庫の金額が相対的

に大きいと、その中身がとても気になります・・・


次回は【ソフトウェア資産】についてお話します。

ではまた。



こんにちは。


今日は前回に引き続き、財務分析についてお話します。


新規取引先の場合、会社の決算書を見て、この会社はどうか?

儲かっているか?倒産リスクは?といった判断をされるかと

思います。

その際、儲かっているか否かよりも、月次の現金収支はどうか?

現金はあるか?といったところをまず最初に確認しましょう、

といったお話を前回させて頂きました。


一定規模の債権が継続して発生する場合や、事業提携して

役割分担を行って一緒に事業をする場合においては、より

深い調査が必要です。

さらに出資や買収となると、徹底したデューデリジェンスが

必要となります。

今回から何回かに分けて、決算書上、一見してわからない

問題点のあぶり出しについてお話します。


月次の現金収支、現預金残高の次に着目するのは、貸借対照表

の中の資産の中身です。

また、出来る限り、直前3期分を比較することをお勧めします。


【売掛金】

期末の売掛金残高と、月次の平均売上高を比較しましょう。

(貸倒引当金を計上している場合はその差額)

業界によって回収サイトが異なりますが、一般的には1~2ヶ月分

が妥当と考えられます。

2ヶ月以上の場合や、過去よりも増加している場合は、先方に

その理由を確認しましょう。

以前、あるベンチャーと共同出資で事業を行う話が持ち上がり

ました。

その際に、その会社の決算書3期分を取り寄せ、売掛金と月次

の平均売上高を比較したところ、3期前は2ヶ月分以内だった

ものが、直前2期分においては3ヶ月分以上となっていました。

そこで、それぞれの期の期末債権先一覧を確認したところ、

同じ会社で同じ残高が記載されていました。

つまり、1年以上前からその債権先からの回収が困難な状況

に陥っており、この債権残高が前述の月数を押し上げていたの

です。

先方経理担当役員からは、当初この不良債権について何の

説明もありませんでしたが、最終的には回収不能であることを

認めました。

つまり実態のない多額の金額を、引当処理も行わず、売掛金

の中に含めていたのです。

そのベンチャーに対しては、財務状況の不安が生じたことに加え、

上記のやり取りの中で、信頼関係が崩れてしまったことなどから、

共同事業を白紙とさせて頂きました。


では、上記のようなケースを示す事例を以下にてご説明致します。


■売上 (単位:百万円)

前期   前々期  3期前

240   216    180


*月次の平均売上(上記を12等分)

前期   前々期  3期前

20    18     15


■売掛金

前期   前々期  3期前

45    40    24


これだけ見ると、特に違和感はないですが、売掛金÷月次平均

売上(=平均回収期間)を算出してみましょう。


■売掛金÷月次平均売上

前期   前々期  3期前

2.25  2.22   1.6


3期前に比べ、前々期からいきなり0.6ヵ月分以上、増加した

ことがわかります。

業界によっては、期末に売上が増加し、一時的に回収期間が

増加することがあります。その為、過去3期分を比較します。


上記の場合、前期、及び前々期の売掛期の中に、10百万円の

不良債権が含まれていたとします。その部分を除きますと、


■売掛金

前期   前々期  3期前

35    30    24


■売掛金÷月次平均売上

前期   前々期  3期前

1.75  1.67   1.6


と、特に違和感のない差異となります。つまり、不良債権が

回収期間の差異を生み出していたということになります。

もちろん、3期以前にこのような不良債権が含まれている場合は、

3期分の比較であぶり出しは難しいですが、その場合は過去3期

の期末時点の債権先リストを並べ、金額の変動のない相手先など

を確認するといった方法が有効です。


さて、次回は「在庫」と「ソフトウェア資産」についてお話します。


ではまた。


すっかりご無沙汰しております。

4月に入ってやっと2本目のブログです。


このブログを読んで下さっている方に、折角のお時間に見合う、有用な

ネタを提供したい、という気持ちが強くあり、またそういうネタも幾つか

あるのですが、なかなかデリケートな部分もあり、躊躇しております・・・

と言い訳から入らせていただきました。


さて、今日は与信限度設定や、デューデリジェンスの際に行う財務

分析の重要なポイントをお伝えします。


一番のチェックポイントは、「現預金」です。

現預金は、決算書上の水増しが容易でないので、この数字をまず確認

します。

言い換えますと、それ以外の流動資産、例えば売掛金や貸付金、在庫

などは、実態以上の金額を表示されている場合があるので、幾つかの

視点からチェックする必要があります。

このあたりについては次回ご説明します。


では、財務分析の入門編に入ります。

まず、月次のPLから月々の平均的な利益を出します。

その後、減価償却費を加算、短期借入金の12等分した金額を減算し、

簡便的に月次の現金収支を出します。

これがプラスなら、まずは安心です。

逆にこれがマイナスなら、前述の現預金から「何ヶ月もつか?」を

考えます。言葉だけではわかりづらいですね。

以下、簡単なPLとBSでご説明します。


単位: 百万円

■PL

売上: 240

仕入: 120

減価償却費: 12

当期利益: 24


■BS

資産の部

現預金: 20

その他資産: 80

資産合計 100

--------------------

負債の部

短期借入金 24

その他負債 56

純資産 20

負債・純資産合計 100


この会社の毎月の平均的な利益は、2百万円です。

(24百万円÷12ヶ月)

月次の現金収支は、

2百万円+1百万円(減価償却費)-2百万円(借入金返済)=1百万円

となります。

このように、月次の現金収支が黒字である限り、会社の継続に問題は

ありません。


仮に、短期借入金が48百万円だった場合、月次の現金収支は

2百万円+1百万円(減価償却費)-4百万円(借入金返済)=▲1百万円

となります。

つまり、毎月黒字であるものの、現金収支では毎月1百万円の赤字と

なります。

一方、現預金が20百万円ありますので、単純計算では20ヶ月持ちます。

仮に、現預金が5百万円だったら、新たな資金調達か、借入金の返済

猶予がない限り、5ヶ月で倒産となります。


つまり、会社は黒字でも倒産する可能性があるため、いくら現金を持って

いるかが重要なポイントとなるのです。


もちろん、実際の債務分析はこんなに単純ではなく、様々な角度から

数字の裏側に潜む実態のあぶり出しを致します。

ただ、どんなに複雑なプロセスでも、基本は「現金を持っているか否か」

です。そしてその上で「現金を稼ぎ出せるかどうか」を評価します。


次回は、「実態のあぶり出し」のポイントについて、幾つかのポイントを

ご紹介致します。


ではまた。