美妃子たちだけでの生活が決まってから

学校からいくつかの
決めごとを出され


美妃子たちは
兄弟でそれぞれの役割分担をした。


兄は
仕事を探しに


姉は
洗濯とゴミだし


美妃子が
掃除と食事の用意をした。



それでも
やはり学校の先生や

役所関係の人


毎日、誰かが美妃子たちの家に
ようすを伺いに来ていた


そんなある日


誰かが
いつものように美妃子の家の扉を
ノックする



誰かが来る毎日に正直
精神的にうんざりしていた美妃子
だったが、


今は居留守を使うことも出来ず
仕方なくでた



そこに立っていたのは


いつも美妃子たちの陰口を言い
家が臭いとか

睨むように美妃子たちを見ていた

近所のオバサンだった。



一瞬、
また何を言いにきたかと思っていると


いきなり
オバサンは


「あなた達もたいへんだね」

「お母さんがあんなだからかわいそうに」

「これ良かったら作りすぎたから食べて」




と、
一人で美妃子たちが可愛そうだと
繰り返しペラペラしゃべりながら


何か入ったタッパを
押しつけるように差しだした



断ることもできずに
仕方なく受けとると


オバサンは納得したように帰って行った。



恐る恐るタッパを開けてみる


そこには
作り過ぎたという量じゃない


山盛りの
煮込みハンバーグが入っていた



煮込みハンバーグは好きだけど…



あれだけ
美妃子たちの悪口を言ってた人が


猫かぶったように

美妃子たちが可愛そうだと…





何が可愛そうなの?



お母さんがあんなだからって…


あなたに
母の何が分かる?




「ふざけんな!!」




美妃子は一口も口にすることなく
泣きながら


ハンバーグを捨てた




ただ
悔しかった…



あんな人に
同情される自分が悲しかった