【第14回 伊藤鴎】新人公演のつくり方について | 早稲田大学演劇倶楽部

32期 伊藤鴎です。

 

川口さんの素敵な記事のあとで、どんなことを書こうか非常に悩んでおります。シュークリームは膨らませるのに失敗したら、油で揚げちゃえば、フレンチクルーラーになるってなんかの漫画で読んだことある気がするんですが、なんの漫画だったか思い出せません。私の新人訓練を振り返ってみると、わりとフレンチクルーラーばっかり作ってたような気もしますが、まあ美味しければ何でもいいでしょう🍩

 

新歓ブログということで、演劇倶楽部の活動内容を私なりの言葉で紹介したいなと思うわけなのですが、これまでの活動が果たして今年度において適応可能かということを考えると、どう語ればよいものか…と頭を抱えています。

 

ただひとつ、演劇倶楽部のアイデンティティとして、結構印象強いなと思う、新人公演のシステムについて、お話してみようと思います。

 

演劇倶楽部の新人公演は例年、エチュード(即興劇)を基軸にしたコメディを制作します。

いや、ひょっとしたら、これまでにそうじゃない年があったかもしれないですが、だいたいはそのやり方でつくってきたはずです。

 

とはいっても、それはどうやるの…?と話ですよね。

 

近年のケースでは、主に新人さんのなかから脚本担当のひとを選び、そのひとが物語のプロット(起承転結)を考えます。

 

そのプロットをもとに先輩が、シーンを書き起こします。

 

例えば、

 

シーン1 あるところにおじいさんとおばあさんが暮らしていた。

 

シーン2 おばあさんが川で洗濯をしていると大きな桃が流れてきた。

 

シーン3 おばあさんが桃を持ち帰り、おじいさんに見せたところ、桃から男の子が生まれてきた。

 

というような。

 

新人さんはこのト書きをもとに先輩にエチュードを披露します。

基本的にこのエチュードというのはト書きを守っていれば、どんなことをしてもいいというシステムになっています。

 

新人のエチュードを見た先輩が「これ面白いな」と思った部分を書き足したり、書き換えたりしていくと、さきのシーンが以下のように変わっていったりします。

 

シーン1 あるところにおじいさんの変装をしている若き天才物理学者とおばあさんの変装をしているアンドロイド(物理学者が生み出した)がサイバーテロをしながら暮らしていた。

     

シーン2 アンドロイドが川で洗濯をしていると、防水機能のないアンドロイドは右腕を故障してしまう。流れてきた大きな桃に興味をもったアンドロイドは苦戦しながら桃を拾いあげたが、その際、左腕も故障してしまう。

 

シーン3 両腕を故障してしまったアンドロイドは桃をサッカーボールのように蹴ったり、リフティングしたりしながら持ち帰り、物理学者に見せる。桃から潜入捜査のために送り込まれた特殊部隊の男が三半規管をめちゃくちゃにされた状態で出てきた。

 

上記はあくまでも私が想像した一例ですが、こうしてずいぶんと変化をとげたト書きにエチュードで出てきた具体的な台詞を文字起こししていくと、だいたい最後は殆ど元のプロットの原型を留めない、最初に考えていたお話とはまったくちがった、とんでもなく突飛な脚本ができあがります。

 

私はどちらかといえば、テストよりもレポートのほうが成績がいいタイプで、その場の状況や相手にあわせて瞬時に物事を判断するのがあまり得意ではなく、このエチュードをもとにした創作スタイルというのが実は非常に苦手でした。けれども、冷静な状態だったら絶対出てこないクレイジーなアイディアや、ミラクルな展開がでてくるのはこのやり方ならではだったりして、とても刺激的なのです。

 

毎年、演劇倶楽部の新人公演を観たひとから、

 

「演劇倶楽部の新人公演って、どうやってつくってるの?(どうやってつくったらこういう仕上がりになるの…笑)」

 

というような声を、ほのかに耳にする(幻聴かもしれない)ので、紹介してみました。

 

さて、ここまでつらつらのお話してきましたが、気になるのは今年度はどういうスタイルでつくるの?という部分ですよね。

 

私は新人訓練・新人公演の担当ではないので、なかなか具体的なところに言及することが難しいのですが、今年度も恐らくは例年のスタイルを継承しつつ、細かいところは新人さんたちと相談して調整しつつ、というかたちになるのではないかと思います。こういう状況ではありますが、演劇倶楽部がこれまで大切にしてきた独自の哲学の部分をちゃんと今年の新人さんにも伝えられるような新人訓練・新人公演を実施するために、私たちも日々奮闘中です。

 

今年はどんな新人公演になるんでしょう。わくわくしますね…!

 

念のため、補足しておくと、こういうつくり方をするのは新人公演だけで、そのほかの企画公演も全部こういうつくり方でやっているというわけではありません。いや、別にこういうつくり方をしてもいいし、するひともいますが、だいたい最初に書かれた脚本に忠実にお芝居をつくることが多いです。一応ね…!全部こうやってつくってるの?!と思わせてしまったらいけないので…笑

 

さて、私は久しぶりにコンビニへシュークリームを買いに行こうと思うので、このあたりで締めさせていただきますね。

 

新人のあなたとお会いできる日を楽しみにしています。

 

それでは、また。