MONOist ( 2015年04月22日 09時00分 更新)
「CAEイベントリポート:
あなたが信じるのは解析? 実験? それとも自分の勘? 」
http://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1504/22/news008.html

CAEを推進して「製品開発に活かす」
これを実践していくのは、非常に難しい問題だと思います。

 そんな中で、この座談会の記事は興味深い内容が2点。
それぞれについて、自分の見解と並べてみます。


◇ 解析結果と実験結果、どちらを信じるか?

 CAEを担当している人は、実験結果を信用する人が圧倒的に多い。
実験結果は、真実の値。一般的に妥当な結果だと思います。
しかし製品開発の設計/CAE/実験の全てを経験してきた僕の意見は、オムロンの岡田氏が回答した「自分自身の勘」に近いです。

 CAE結果は多分に解析者の意図が入ります。
過去の経験や図面を基に現象を予測し、解析モデルの形状やメッシュ、境界条件を決めていきます。モデル作成に一定のルールを設ければ、解析モデルの属人性はある程度排除されますが、より詳細な設定は解析者の判断になり、それによって計算結果が変化していきます。
「これが実現象を再現しているかどうか?」
解析者は、自分の判断が妥当なものであるかの拠り所として、実験結果を信じるのです。

 しかし、実験にも多分に評価者の意図が入ることもあるし、予想外の事象が発生することも。
それらの影響によって、実験の目的が正確に評価することができない場合も多いのです。

 僕は、CAEと実験評価の信頼性は、「両者の歩み寄り」だと考えています。
CAEは実現象の再現性が高まるように。実験は実験の目的を正確に評価できるように。
両者が摺合せをして、歩み寄ることがベスト。

 では、解析/実験技術者は何を拠り所にすべきでしょう?
これは理論的に説明づけられる「設計意図」だと僕は考えています。
設計者が図面に対してどのような意図を持たせるか、その理論的な事象を「衝」とする。
つまり、設計/解析/実験が三位一体となって評価事象の信頼性を紡いでいく。

 そんな意味では、設計者が決定する「自分の勘」が一番信頼できる。
というより信頼しなければならないことではないでしょうか。
これを設計者に「お任せ」するのではなく、それぞれの立場から3者で摺合せしていくのが理想だと思います。


◇ センスは磨けると思っている

 どのように技術者の解析センスを磨いていくか?
企業ごとに様々な取組みを実践されているのだなぁ。と感心して記事を読んでいました。

 解析の知識ばかりに特化してしまうと、シミュレーションマニアになってしまい、「開発に役立てる」本来の目的を忘れた技術者が育ってしまう。
しかし、製品開発に特化すると、それ自体のボリュームが大きくて、これまたボリュームの大きいCAE解析の専門知識まで届かなくなってしまう。
 CAE解析者の育成は、非常に難問で、僕の所へ相談が多い案件でもあります。

 そもそも解析センスって何なのか?

 僕は論理的な思考能力だと考えています。
これを養うためには、「考えて、実行し、検証する」これを繰り返すことが必要。
記事では、これらを開発部門の中で実践する具体的な内容に触れていました。どれも正しいと思います。さすがに大手メーカーではいろいろ経験を積まれているようです;

 ここにもうひとつ。取り組みにスパイスを設けると良いと思うのですが・・・
これは企業秘密で触れられていないのかな?


 と、2点についてお粗末ながら見解を述べてみました<(_ _)>
このような異業種間で、開発への活用や人材の育成についての情報を交換することは良いことだと思いました。このようなイベントがもっと増えて、僕も拝聴する機会が得られると嬉しいなぁ。。。
 
KEN