□東京女子医科大学皮膚科教授・川島眞氏
10代男女の9割以上にあらわれるニキビ。かつては「青春のシンボル」ととらえられ、病気と考える人はあまりいませんでした。でもニキビは皮膚の病気の一種。皮膚科を受診し、早く治療を始めるほど、早く、きれいに治ります。汗や皮脂の分泌が多くなるこれからは、ニキビに要注意の季節。今年新たにニキビの日(5月(いつも)21日(ニキビは皮膚科へ))が制定されたのを機に、ニキビはなぜできるのか、どうやって治療すればいいのか、東京女子医科大学皮膚科の川島眞教授に聞きました。
●皮脂のつまりが原因
ニキビは思春期になり、性ホルモン、とくに男性ホルモン(テストステロン)の分泌が盛んになるころから起こってきます。
男性ホルモンは皮脂の分泌を活発にします。盛んに分泌される皮脂が毛穴からしっかり排出されれば問題ないのですが、毛穴の出口の角質が増え出口が狭くなったりふさがれたりすると、皮脂が毛穴の中にたまっていきます。
毛穴がつまって、出口を失った皮脂がたまり皮膚表面が少し盛り上がってきた状態を、医学的に面皰(めんぽう)といいます。いわゆる白ニキビ、黒ニキビのことで、ニキビのでき始めです。この段階では炎症がまだ起こっていないので、赤くもなくそれほど気になりません。
これを過ぎると、毛穴にたまった皮脂を栄養源としている細菌(アクネ桿(かん)菌)が増殖し、炎症を起こし、赤ニキビができます。医学的には丘疹(きゅうしん)と呼び、この段階になるとみなさん気にします。
さらに炎症がひどくなると、毛穴の壁が壊され、白血球のうちの好中球(こうちゅうきゅう)が毛穴に集まり、膿(うみ)をもった黄色ニキビに変わります。これは膿疱(のうほう)と呼ばれる状態です。自分で膿疱をつぶしたり、放置して治療しないままでいると、さらに大きいニキビになったり、ニキビが治ったあとに、へこみや盛り上がりなど瘢痕(はんこん)を残すこともあります。もちろん、小型の膿疱の状態で適切な治療をすれば痕(あと)もなく治ります。
●1個でもQOL低下
ニキビにはこのようにいくつかの段階がありますが、どんなひどいニキビでも年をとるとおさまってきます。ただ、できているときには悩みますし、きちんと治療しないと永久的に残る瘢痕ができてしまいます。
「たかがニキビ」と思っている人は多いのですが、患者さんの中には1個できただけでものすごく落ち込む人も少なくありません。一般的には病気の症状に応じてQOL(生活の質)が落ちることが多いのですが、ニキビの場合はすごく軽い症状の人も、すごく重い症状の人も、精神面でのQOLの低下の程度にそれほど差がないという調査があります。このため軽い症状でもきちんと治療にあたらないといけないのですが、皮膚科医の一部を含めて世の中全般に「こんな軽いニキビは放っておけばいいんじゃないの」という風潮もありました。
実際、これまでの日本でのニキビ治療は十分とは言えませんでした。というのも、日本ではこれまで、でき始めの症状である白ニキビに対して効果が高い薬がなかったのです。赤ニキビや黄色ニキビの炎症を抑える抗菌作用のある塗り薬が使えるようになったのも約10年前のことです。それ以前は医療機関を受診しても、市販薬と変わらない成分の薬しかありませんでした。このため、かつてニキビで医療機関を受診した患者さんの中には、「病院で診てもらったのに、たいしてよくならなかった」と思っている方もおられるのではないでしょうか。
長い間いい薬がなかったニキビ治療ですが、1年半前に日本でもようやく白ニキビにも効果のあるアダパレンを成分とした塗り薬が承認され、保険適用となりました。これは毛穴のつまりをなくし、皮脂をためずにスムーズに排出する作用のある薬です。白ニキビから赤ニキビへと進展するのを防ぎ、新しいニキビができるのを抑える予防的治療も期待できます。
日本皮膚科学会が平成20年9月に出したニキビ治療のガイドラインで、この薬は白ニキビ、赤ニキビ、黄色ニキビのいずれでも第一選択薬となっています。白ニキビの段階でこの薬を使えば、1、2週間で効果が現れてきます。赤ニキビなど炎症が起きているニキビは、抗菌薬の塗り薬や飲み薬と併用することが勧められています。
ただし、この薬は使い始めて2週間以内に皮膚の乾燥や刺激感、すなわち皮膚がぽろぽろはがれる、赤くなる、ヒリヒリする、かゆくなるなどの症状がみられます。しだいにおさまるので治療の継続には問題ありませんが、患者さんはそのことをきちんと理解した上で使ってもらえればと思います。
●根拠のある予防なし
本当はニキビができなくなる予防法があればいいのですが、今のところエビデンス(科学的根拠)のある予防の方法はありません。「1日2回の洗顔の方が1回よりニキビができにくい」というエビデンスはあるのですが、ニキビを絶対できなくするわけでありません。
一般的に脂っこいものやチョコレートを控えるようにといわれますが、これを食べると誰でも必ずニキビができる、または悪化するというような証拠のある食品はありません。もちろん、チョコレートを食べるとニキビができやすいと感じている人はチョコレートを控えた方がいいですが、食べなければニキビができないというわけでもありません。完全な予防はできませんので、ニキビ痕を残さないために早めの皮膚科での治療が大事になってきます。
ニキビができても症状が軽いうちは、洗顔料を替えたり、市販の塗り薬で治そうとする人が多く、医療機関を受診する人はまだ少ないのが現状です。でも、ニキビは症状が軽いうちに皮膚科の専門医を受診し、治療を受けてもらいたいと思います。
・ 六甲山に初夏の訪れ クリンソウが見ごろ(産経新聞)
・ 【鳩山ぶら下がり】「キョロキョロしていると批判されるので…」(19日夜)(産経新聞)
・ ゆったり 平安絵巻 都大路で葵祭(産経新聞)
・ 選挙中のHP・ブログ更新を解禁…与野党合意(読売新聞)
・ 酒の安売り、飲み放題の規制強化へ…WHO指針(読売新聞)
10代男女の9割以上にあらわれるニキビ。かつては「青春のシンボル」ととらえられ、病気と考える人はあまりいませんでした。でもニキビは皮膚の病気の一種。皮膚科を受診し、早く治療を始めるほど、早く、きれいに治ります。汗や皮脂の分泌が多くなるこれからは、ニキビに要注意の季節。今年新たにニキビの日(5月(いつも)21日(ニキビは皮膚科へ))が制定されたのを機に、ニキビはなぜできるのか、どうやって治療すればいいのか、東京女子医科大学皮膚科の川島眞教授に聞きました。
●皮脂のつまりが原因
ニキビは思春期になり、性ホルモン、とくに男性ホルモン(テストステロン)の分泌が盛んになるころから起こってきます。
男性ホルモンは皮脂の分泌を活発にします。盛んに分泌される皮脂が毛穴からしっかり排出されれば問題ないのですが、毛穴の出口の角質が増え出口が狭くなったりふさがれたりすると、皮脂が毛穴の中にたまっていきます。
毛穴がつまって、出口を失った皮脂がたまり皮膚表面が少し盛り上がってきた状態を、医学的に面皰(めんぽう)といいます。いわゆる白ニキビ、黒ニキビのことで、ニキビのでき始めです。この段階では炎症がまだ起こっていないので、赤くもなくそれほど気になりません。
これを過ぎると、毛穴にたまった皮脂を栄養源としている細菌(アクネ桿(かん)菌)が増殖し、炎症を起こし、赤ニキビができます。医学的には丘疹(きゅうしん)と呼び、この段階になるとみなさん気にします。
さらに炎症がひどくなると、毛穴の壁が壊され、白血球のうちの好中球(こうちゅうきゅう)が毛穴に集まり、膿(うみ)をもった黄色ニキビに変わります。これは膿疱(のうほう)と呼ばれる状態です。自分で膿疱をつぶしたり、放置して治療しないままでいると、さらに大きいニキビになったり、ニキビが治ったあとに、へこみや盛り上がりなど瘢痕(はんこん)を残すこともあります。もちろん、小型の膿疱の状態で適切な治療をすれば痕(あと)もなく治ります。
●1個でもQOL低下
ニキビにはこのようにいくつかの段階がありますが、どんなひどいニキビでも年をとるとおさまってきます。ただ、できているときには悩みますし、きちんと治療しないと永久的に残る瘢痕ができてしまいます。
「たかがニキビ」と思っている人は多いのですが、患者さんの中には1個できただけでものすごく落ち込む人も少なくありません。一般的には病気の症状に応じてQOL(生活の質)が落ちることが多いのですが、ニキビの場合はすごく軽い症状の人も、すごく重い症状の人も、精神面でのQOLの低下の程度にそれほど差がないという調査があります。このため軽い症状でもきちんと治療にあたらないといけないのですが、皮膚科医の一部を含めて世の中全般に「こんな軽いニキビは放っておけばいいんじゃないの」という風潮もありました。
実際、これまでの日本でのニキビ治療は十分とは言えませんでした。というのも、日本ではこれまで、でき始めの症状である白ニキビに対して効果が高い薬がなかったのです。赤ニキビや黄色ニキビの炎症を抑える抗菌作用のある塗り薬が使えるようになったのも約10年前のことです。それ以前は医療機関を受診しても、市販薬と変わらない成分の薬しかありませんでした。このため、かつてニキビで医療機関を受診した患者さんの中には、「病院で診てもらったのに、たいしてよくならなかった」と思っている方もおられるのではないでしょうか。
長い間いい薬がなかったニキビ治療ですが、1年半前に日本でもようやく白ニキビにも効果のあるアダパレンを成分とした塗り薬が承認され、保険適用となりました。これは毛穴のつまりをなくし、皮脂をためずにスムーズに排出する作用のある薬です。白ニキビから赤ニキビへと進展するのを防ぎ、新しいニキビができるのを抑える予防的治療も期待できます。
日本皮膚科学会が平成20年9月に出したニキビ治療のガイドラインで、この薬は白ニキビ、赤ニキビ、黄色ニキビのいずれでも第一選択薬となっています。白ニキビの段階でこの薬を使えば、1、2週間で効果が現れてきます。赤ニキビなど炎症が起きているニキビは、抗菌薬の塗り薬や飲み薬と併用することが勧められています。
ただし、この薬は使い始めて2週間以内に皮膚の乾燥や刺激感、すなわち皮膚がぽろぽろはがれる、赤くなる、ヒリヒリする、かゆくなるなどの症状がみられます。しだいにおさまるので治療の継続には問題ありませんが、患者さんはそのことをきちんと理解した上で使ってもらえればと思います。
●根拠のある予防なし
本当はニキビができなくなる予防法があればいいのですが、今のところエビデンス(科学的根拠)のある予防の方法はありません。「1日2回の洗顔の方が1回よりニキビができにくい」というエビデンスはあるのですが、ニキビを絶対できなくするわけでありません。
一般的に脂っこいものやチョコレートを控えるようにといわれますが、これを食べると誰でも必ずニキビができる、または悪化するというような証拠のある食品はありません。もちろん、チョコレートを食べるとニキビができやすいと感じている人はチョコレートを控えた方がいいですが、食べなければニキビができないというわけでもありません。完全な予防はできませんので、ニキビ痕を残さないために早めの皮膚科での治療が大事になってきます。
ニキビができても症状が軽いうちは、洗顔料を替えたり、市販の塗り薬で治そうとする人が多く、医療機関を受診する人はまだ少ないのが現状です。でも、ニキビは症状が軽いうちに皮膚科の専門医を受診し、治療を受けてもらいたいと思います。
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