『明治天皇を語る』 | えにーの読書感想文

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読んだ本の説明や感想なんかを書いていきます。主にミステリーや歴史・皇室関係についてが多いと思います。
未読の本の内容を確認する際にも参考になれば幸いです。



『明治天皇を語る』

ドナルド・キーン、新潮社、2003年




コロンビア大学名誉教授で日本研究の第一人者。後年、日本国籍も取得され、戸籍上は「キーン ドナルド」として登録されたそうです。漢字で書くと「鬼怒鳴門」なんだとか笑(鬼怒川と鳴門が由来)



そんなキーン氏が描く明治天皇。宮内庁編纂の1万ページ以上もある『明治天皇紀』や侍従の方々の回顧録、当時の外国人が書き記したものを参考に本書を書かれているそうで、それなりに客観的な内容になっているのではないでしょうか。



崩御の日に計られた身長は167cm。当時の日本人としては大柄だったそうです。大酒飲みで風呂嫌い。自分のことは一切口にされることはなく、体調不良についても言わず、好き嫌いや暑い寒いでさえ仰ることはなかったと聞きます。

公正明大で、日露戦争に勝ったときも相手の武人の名誉は守れと仰るくらい。



お父上の孝明天皇の崩御に伴い践祚されたのが16歳のとき。その後、慶應4年(1868)8月27日に即位礼が行われ、同年9月8日から明治が始まりました。天皇一代に一つの元号を定める「一世一元の制」が始まったのも明治から。それまではちょくちょく元号は変わってましたからね。



鎖国が終わり西洋文明に追いつけ追い越せの時代となり、日清・日露戦争を経て大国へとのし上がっていく時代です。アジア諸国は次々に西洋の植民地にされていく中で、絶大なる権力を持ちながら敢えて行使しない立憲君主像を貫かれた明治天皇。

そんな明治天皇にとって大切なのは、天皇が日本に統一性を与える存在であるという考え方だったそうで、日本の歴史の芯であること。そんな義務感や使命感もバリバリお待ちだったのではないでしょうか。



崩御された後、世界中の新聞に明治天皇を称える論評が掲載されたそうです。「世界で最も偉い君主だった」と評価されているのだとか。ほんとう、現代日本の礎を作られた御方ですよね。