散歩をしていたら、桜の木があった。
春になる前の伐採で、邪魔な小枝が切られていた。
おおきな枝は切られ、粉々にされ、春の木の肥やしにされていた。
ちいさな枝は小さすぎるので、そのままほっぽってあった。
『やあ、桜の小枝くん』私はいった。
『君は切られて悔しくないのかい?』
『そりゃ悔しいさ』小枝は言った。
『だって、もしこっち側に道さえなけりゃ、僕は切られなかったのだよ。そのうえ、たまたまこっち側に生まれてしまったのだからね。いろいろな条件が重なって、僕は切られてしまった。せっかくここまで大きくなったのに。蕾だってほら。こんなに大きいだろう?』小枝は私に蕾を見せつけた。
『こんなに大きくなったのに。あとちょっとだったのに。』小枝は涙をぽろぽろと流した。
私はいたたまれない気持ちになり、空を見上げた。
そうなんだ。人生はほんの少しのことで大きく変わってしまう。それは小枝のせいじゃなくて、本当にどうしようもないことなんだ。もしかすると、今まだ桜にくっついている小枝よりも、今泣いている小枝の方が美しい花を咲かすかもしれない。でも、運命という大きな流れの中では、そんなことはちっぽけなことにすぎないのだ。
『ねえ、小枝くん。』
『なんだい?』
『もし、君さえよければうちに来ないかい。家は暖かいから、もしかすると花が咲くかもしれない。今ここにいても、君はここで腐ってただの肥やしになるだろう。家に来ても死ぬことにかわりはないが、その前にひと花咲かせてみないかい?』
桜は驚いたように身をブルブル震わせたあと、考え込むようにして身をくねらせた。それからぴょん、と飛び跳ねた。
『では、よろしく頼むよ。君の家に連れて行ってくれ。』
『お安いごようさ。』
そうして私は小枝を拾い、寒空の下を歩いて帰った。空は青く、広々としていた。
このあと、小枝は私の家で、2つの良い香りの花を咲かせる。
もちろん開かない蕾もあった。だが、その花はどの桜の花とも違う、私のために咲いてくれた、かけがえのない花のようにに思えた。
春になる前の伐採で、邪魔な小枝が切られていた。
おおきな枝は切られ、粉々にされ、春の木の肥やしにされていた。
ちいさな枝は小さすぎるので、そのままほっぽってあった。
『やあ、桜の小枝くん』私はいった。
『君は切られて悔しくないのかい?』
『そりゃ悔しいさ』小枝は言った。
『だって、もしこっち側に道さえなけりゃ、僕は切られなかったのだよ。そのうえ、たまたまこっち側に生まれてしまったのだからね。いろいろな条件が重なって、僕は切られてしまった。せっかくここまで大きくなったのに。蕾だってほら。こんなに大きいだろう?』小枝は私に蕾を見せつけた。
『こんなに大きくなったのに。あとちょっとだったのに。』小枝は涙をぽろぽろと流した。
私はいたたまれない気持ちになり、空を見上げた。
そうなんだ。人生はほんの少しのことで大きく変わってしまう。それは小枝のせいじゃなくて、本当にどうしようもないことなんだ。もしかすると、今まだ桜にくっついている小枝よりも、今泣いている小枝の方が美しい花を咲かすかもしれない。でも、運命という大きな流れの中では、そんなことはちっぽけなことにすぎないのだ。
『ねえ、小枝くん。』
『なんだい?』
『もし、君さえよければうちに来ないかい。家は暖かいから、もしかすると花が咲くかもしれない。今ここにいても、君はここで腐ってただの肥やしになるだろう。家に来ても死ぬことにかわりはないが、その前にひと花咲かせてみないかい?』
桜は驚いたように身をブルブル震わせたあと、考え込むようにして身をくねらせた。それからぴょん、と飛び跳ねた。
『では、よろしく頼むよ。君の家に連れて行ってくれ。』
『お安いごようさ。』
そうして私は小枝を拾い、寒空の下を歩いて帰った。空は青く、広々としていた。
このあと、小枝は私の家で、2つの良い香りの花を咲かせる。
もちろん開かない蕾もあった。だが、その花はどの桜の花とも違う、私のために咲いてくれた、かけがえのない花のようにに思えた。