不足するミネラル摂取
ミネラルの性質の一つに、一種類だけでなく多種類で連携して働くという点が挙げられます。例えば、貧血の人は鉄分を摂るように勧められますが、実際には鉄分だけを摂っても貧血は解消しません。鉄が体内で働くためには、銅、亜鉛、鉛、コバルト、カドミウム、セレンなどの助けが必要です。このように、ミネラルはチームワークで働くのです。
また、人はその体の中でミネラルを作り出すことができないので、多種類のミネラルを体の外部から探り込む必要があります。それは、毎日の食事を通して行われるのですが、現代は環境の変化により、食事からミネラルが摂りにくくなってきました。
元素であるミネラルは人工的に作り出せるものではなく、大地等に存在するものを吸い上げるしかありません。しかしながら、1992年のアースサミットにおいて、ここ数十年間で、北アメリカで約9割、その他の大陸でも約7割から8割のミネラルが大地から失われているとの発表がされました。
日本を例にとってみても、ミネラルの減少は顕著に現れています。日本食品標準成分表によると、1950年頃、ほうれん草には約13mgの鉄が含まれていたのに対し、現在は約2mgしか含まれていません。実に約85パーセントもの鉄が、ほうれん草から失われました。大根や人参、その他の野菜についても同じことが言えます。
大地からミネラルが減少した原因はいくつかあります。
一つはダムの建設と言われています。山などに含まれていたミネラルは雨と共に川水となって下流に流れていき、農地に流れ込んでいましたが、ダムによってそれらが遮られるようになってしまったのです。ダムは洪水による水害を防ぎ、新しいエネルギーを供給しますが、それまでに行われていたミネラルの運搬を遮ってしまっているのです。
二つ目は下水の発達です。以前は、ミネラルを採った人間、動物などから出された排泄物は、ミネラルを含む肥料として農地にまかれ、土壌に還元されていました。しかし、下水の発達により、排泄物はそのまま捨てられるようになり、これもミネラルの循環を遮ってしまっています。
三つ目は化成肥料の使用です。化成肥料にはある特定種類のミネラルしか含まれていないため、それを土壌に撒くことによって、土中のミネラルバランスを壊してしまい、その土壌で育つ野菜に、人間が必要とする多種類のミネラルが含まれなくなってしまっているのです。
効果的なミネラル摂取には「植物系ミネラル」を
深刻なミネラル不足が明らかになって以来、様々な形で何百種類ものミネラルサプリメントが開発されてきました。しかしながら、その全ては「鉱物系ミネラル」あるいは「金属系ミネラル」と言われるものです。鉱物系ミネラルは、粒子サイズが大きいので体内で吸収することがほとんどできず、また何よりも、含有されるミネラルの種類が少ないために過剰摂取をするとミネラルバランスを崩し弊害が出ると言われています。
これに対して「植物系ミネラル」とは、土壌中のミネラルが一度植物に取り込まれ、それらの植物から抽出されたミネラルのことを指します。前述の「鉱物系ミネラル」「金属系ミネラル」とは対照的に、植物系ミネラルの粒子サイズはナノ単位と非常に小さく、一度植物を通しているので安全性も高く、より人の体に適したかたちで摂取することができます。
人間には、毎日70種類以上のミネラルが必要であり、これらを摂取することで人間の体は機能するための仕組みを正常に維持することができるのです。ミネラルを摂取したら病気が治るという訳ではありません。しかし、病気を治す仕組みを作る・維持するためには、ミネラルが必要不可欠なのです。