「僕のセックス、気持ちがいいだろ。前の彼女たちがみんなそう言うんだ」
冗談で言ってるんだろうと彼の顔を覗きみたけれど、全然冗談を言ってる顔をしていない。
その綺麗なお顔は、自信たっぷりに笑顔を浮かべていて、その顔だけ見れば確かにそれに頷いてもいいかな、なんて思ったけど私は、突如恥ずかしくて恥ずかしくて居た堪れなくなった。
それは決して彼が男前で、それにときめいたとか、緊張したとかじゃない。
セックス自慢をするあっぱれな彼を受け入れながら、話を聞きながら、その満足げな顔を見ながら、恥ずかしくて恥ずかしくて、枕に顔を埋めたくなったのは私の方。
悦に入りながら私を這う彼の舌使いは単調で、中央の溝を上から下へと行ったり来たり、繰り返しているだけ。
ときどき、溢れ出した私の愛液を美味しい美味しいと啜っているけれど、それはほとんど彼の唾液だと思う。
きっと敏感な場所さえも、把握していないのだろう。
お前、一体なんだって、この程度でこんな風に変な自信を持ってしまったの?
と思っていたけれど、理由はわからないでもない。
彼はこの綺麗な顔と存分な知名度を持ってちやほやとそれはもう大臣かお殿様か、もしくは王子様のように扱われてきたのだろう。
舐めるのを止めて、彼は私の中に2本の指を入れると、突如激しく掻き回し始めた。
あまりの激しさに私は声を上げ、眉間に皺を寄せた。
私の苦痛に歪んだ顔が、彼にはよがっている顔に見えるらしく、ホラホラどうだとばかりに、さらに指を突き立ててくる。
「ほら。気持ちいいでしょ。逝っていいよ、逝って。逝って」
こんな彼をがっかりさせずにさっさと撃退してしまうには、もう逝ったフリしかない。
あたしは感極まった顔をして、膣を締めて、足を伸ばした。腹筋に力を入れてほんのり汗を身にまとわせ、声を上げる。
彼は、私の中から指を引き抜いて、美味しい美味しいと満足げにそれを舐めている。
それを見ながら私は、見たことも会ったこともない昔の彼女たちとやらに、同情した。
彼の気分を悪くさせないために、何度も何度も逝ったフリをしていたであろう、昔の彼女たちに。
「ねね、何回逝った?2回?3回?もう、逝きまくってたね。可愛いなぁ」
私より、お前の方が全然可愛いよ。
なんてことを言わないことで、彼の自信は暴走しているのだと思われる。
でも、彼が満足なのであれば、私はそれで全然構わない。
すごく素敵な勘違いをしてくれる彼に私は愛おしさすら覚える。
彼に任せて挿入したって結果は見えたようなものだから、私は自分で彼にまたがる。
数回腰を揺らしただけで、
「ダメだよ、自分だけ気持ちよくなろうとしたって。僕だけ先に逝っちゃうだろ」
なんて言っちゃう自分勝手にハッピーな彼に私は卒倒しそうになる。
ゆっくりゆっくり動かして、彼の「あ、逝く、逝くよ」の声に合わせて、「私も逝く」なんて言ってみて、一緒に登りつめるフリをする私。
「ね、ちゃんと一緒に逝けたでしょ。自分だけ気持ちよくなろうなんてずるいよ」
このレベルまでおめでたいやつなんて滅多にお目に掛かれない。
「舐めて。吸って。吸いながら舐めて。もっと優しく。もっと強く。もっと早く」
そんな風に彼女に言わせてあげられないのだと思う、きっと彼は。永遠に。
「お前、フライ~ング!」なんて言って頭をはたいてくれるよな、その天まで届きそうな鼻をあっさりへし折ってくれる、素敵な恋人出来るといいね。