空気を飲み込む。
苦し紛れに何故、と君は呟いた。
「ごめん。」
何に対しての謝罪かも分からぬまま、君に言い放つ。
端正な顔の君が歪む。
「なんで、」
絶望と驚愕の混ざった複雑な表情を見せ、君は綺麗な瞳に捕えた。
“同じ世界にいるのに、同じ世界にはいない。”
分かるようで分からないその論理に困惑する。
「なんで、だよっ…」
涙、涙、涙。
君の頬を濡らす腐敗の雨。
魔性の仮面はいつも偽造の笑みを浮かべた。
“同じ世界にいるのに、君とは会えなかった。”
感傷に浸る蝴蝶の翅は必ずや記名する。
忘却、喪失。
君はもう知らない。
輝く星の死の意味を。
曖昧な朧月とは裏腹に君影草は嘲笑する。
“同じ地、同じ空間、同じ時間…―同じ世界にいたけれど、君と逢うことは無かった。”
「なぁ、答えろよっ…」
潔白だからこそ、黒く塗りたくなる。
懇願する君の顔は何故か懐かしさをそそった。
「忘れて。」
“会わなかったんだ。君とは。同じ世界にいるのに。前世でも、来世でも、そしてこれから永遠に。”
「お前、何言っ、」
見開く瞳。
虚空を切った一片の花弁。
君の大好きな花。
数え切れない程の哀訴を欺いて、歴史を書き倦む。
“忘れて。”
大好きな君。愛しい君。
会えなかった君。
微かに咲いた幾つもの星々の煌めき。
「何で、何で、何でだよっ…―。答えろっ!」
糾弾の雨が降り注ぐ。
見据える数多くの夢、悪夢。
沈黙の拒絶。
耐えきれぬ衝動。
“同じ世界にいても、同じ世界にはいなかった。”
「―っ、…何でっっ!!」
慟哭の雷。
一瞬の刃の刹那の阿吽。
呟く。
掻き消される。
明星の泪。
“君の笑顔が見たかった”
仮染の世に舞うしなやかな烏。
夢想に消える雲雀。
哀願の黎明。愛玩の君。
暁に染まる隘路。
「どう、して……」
“同じ世界に、いたのにいなかった。”
何故なら君とは…―――
The end
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初めてあげる作品がこんなんでいいのかな?
とりあえず、このシリーズが何個か上がります←
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