trip*trap -52ページ目

余命ココノカ

昨日はね
ずっと時計が気になってたんだ
あなたに逢いたくて
あなたの顔が見たくて

気が付くと終電
急激に酸素を奪われ
内臓を圧迫された
呼吸困難をおこした

ヘロヘロになりながら
下り立った駅で
重たい脳の一部で
彼が迎えに来てくれたら
なんて淡い期待を抱いたのだけれど、
私は戯れて来たわけで
彼は必死に戦って来たわけで
咄嗟に甘えを打ち消す

3m位のフェンスを
右手に仰ぎながら
堅いソールを地面に打ち付け歩む

小さい隙間から
しなやかな雌猫
にゃーん
猫撫で声をあげたのはあたしで
あたしの声に驚いて逃げられる

ちぇっ
しょんぼりしながらまた
踵でアスファルトを叩く

煙草の自販機の影から
黒いバイク
白いヘルメットから
零れる様なサラサラの茶色い髪
よく似合うカーキのジャケット
ディオールのサングラス
リーバイスのジーンズで
地面を蹴る長身の彼

にゃぁぁん
咄嗟に漏れる猫撫で声

飲み行きたい
鳥皮が食べたい

多分私が
ご飯を作る気がないのを知って居て
可愛いお誘い

昔好きだった人の彼女が働いて居た
少しお洒落な居酒屋へ

鳥皮
ほっけ
揚出し
梅胡瓜
手羽

いつもの
変わらない酒肴に安堵

高校の話に花がさいて
彼は珍しくよく喋った

おうちに居るとテレビばっかりだから
外に出ると嬉しいの

彼は唯
お腹が空いて居ただけなのかもしれない
でも
それだけでも
あたしの存在意義になる

おうちに帰ってシャワーを戴く
多分あたしはナチュラルだったよ
お腹のお肉の争奪戦
転げ回って戯れる

只野仁

あたしは吃驚するくらい吹いて
彼は軽くなるかもよって嗤った