trip*trap -164ページ目

ハガキ


何の気なしに立ち寄った雑貨屋
手垢の付いた葉書に牽かれて足が止まる
脳裏に過るは母親の横顔

筆無精のあたしと違って彼女は
凄く筆まめで、達筆で
手紙に添えては
パウンドケーキやら
大量のパンツやら、なにやら
律儀に送りつけてくれて
其れもあたしが望んだ事で
なのにあたしは返事も書かなくて
流石に申し訳ない気分で

いつからか辿々しい文章に添えて
不細工な似顔絵を描いて
気が向くと彼女に宛てて送ってた

実家に帰ると其れが
何故か額に飾られていて
気恥ずかしい感じ


もう随分葉書を出していなかった
こっちに来てからは1枚も
そろそろ近況を、そう想って
エキセントリックなのを買って帰った

なのに、部屋に戻ったらペンすら持てなかった

 ナニヲカケバイイ?

今のあたしに描ける近況なんか無い


アノヒトの為に買い物をして
アノヒトの為に必死で運動してる

アノヒトの為に毎日レシピを考えて
アノヒトと飲むお酒がおいしくて
アノヒトと一緒に居る時間が心地好くて

アノヒトの迎えを待つ時間が倖せなの
アノヒトの背中にピッタリと
しがみつける10分間が至極倖せなの

アノヒトと腰を振ることしか脳が無くて
アノヒトが居なくなったら
壊れてしまう事が明確なあたしが
彼女に伝えられる事は何一つ無いよ

こんな風に育って御免なさい