trip*trap -148ページ目

覚醒と仮死


静寂が耳に障って

ふと眼を覚ますと

月明かり一つもない

夜に堕ちていた


重いなづきを擡げて

携帯を弄る、午前零時



切望していた便りは

予想通り戴けておらず

気遣いだけを簡素に包んで

宙に放り投げる


あの人の苦労の類いの程は

見せないながらも解っているつもり、

辛くなるのは幼稚で脆弱な心だけと

行き場のない気持ちを隠蔽

忘れた振り、気にならない素振り

視覚の刺激により覚醒を計る



胎内のヴァランスが

著しく狂ってる


四十時間の覚醒と

八時間の仮死

今日で五日目


「考え過ぎだよって」

隣で煙を吐く母親の言葉が

シロップの遊体離脱を思い出させて

「其れは癖だから治らないんだ」と

鰓の辺りで含み笑いを零す



午前三時

群青の大気は霧に包まれてる

冷え静まった空気が

胃痛と空腹を彷彿、階下へ


家中寝静まった中、換気扇の元

六切りのルヴァンを二枚に下ろす

半分は冷蔵庫へ戻し

もう半分を軽くトースト

定番のトッピングは

柚子マーマレードと

クレイジーソルト

昨日点てた薄いマンデリン

トップバリューの無脂肪ヨーグルト


焼き上がったルヴァンの香りが

荒れた臓器に刺さって

競り上がってきた吐き気を

冷えたマンデリンで流し込み

紫煙に巻く


肺が汚れて充たされて

汚食事はおしまい

残ったルヴァンの行き場に困惑



明日はあの人が行って仕舞う

あなたが気にも留めない事実が

あたしには辛くて痛いから

明日は独りで旅にでるよ


あなたが歩いた時間の様に

あたしが紡いだ空間が有る筈

其れを確かめる為だなんて

下らない理由で

空白を埋めに行ってくるよ