恋がしたい。
結婚に焦るべき年頃なのだが。
自由な恋、楽しかった。
一番楽しかった恋の記憶は高円寺。
6畳1間、風呂なし、共同トイレ。
しかもトイレは紐を引っ張って流すやつ。
共同トイレはペーパーも空で、使う分を部屋で取って行くスタイル。
畳は一部凹んでおり、ベッドは腰の位置あたりが少し沈んでいた。
ベランダもなく、布団は干していないから、少し砂っぽかった。
そんな部屋に通いつめた。
15年前、クリスマスの日に女2人で居酒屋で飲んでたら、ボロボロなサンタの格好をした彼と、彼の友人に声をかけられた。
恋人にフラれ、恋なんてもう出来る気がしないとか思っていた時期だったはず。
「え、なんか、ありだわこの人。どーしよ。」と思った。楽しく飲んで、ついていった。6畳1間のアパートに。
「ホントに良いの?」
「良いよ。」
それからその部屋に通いつめる日常が始まった。
鍵をなくしたため、いつでも入り放題。
鍵が閉まってる=部屋の中にいる
早朝、始発で会いに行くと、鍵が閉まっていた。
ノックをしても、電話をしても、起きない。
大声を出すのは近所迷惑だ。
外に回り、窓を開けた。
窓を軽く叩いて名前を呼んだ。
彼「わぁああぁぁぁ!オバケじゃん!え、ちょ、鍵閉まってた?ちょっと、何してんの。今開けるから。回って来て。」
帰れって言われなかった。
彼「俺今日いなかったかもよ?」
私「いなかったら部屋で待ってる。」
付き合ってなかった。
それってストーカー?
彼の友人が、鍵が閉まってるのはシコッて寝た時くらいだと言っていた。
部屋に遊びに行くと、彼の友人だけがいることもあった。
私「こんにちは。」
友達「よぉ。」
当たり前のように彼の友達が迎えてくれるのも、仲間に入った感じがして嬉しくて、アポなしで自由にその部屋に出入りするのが癖になってしまった。
彼とこの部屋にはミラクルが沢山あって、語り出すと止まらなくなる。
ちなみに一緒に声をかけられた女友達も、彼の友人に恋をしたっけ。
そんな彼女はもう別の人と結婚して子供もいる。