いつものように貴女の寝顔を見ながら呟いてみる。

 

いつか貴女は独り立ちする。

いつまでも一緒にいられるわけじゃない。

 

今日は初めての保育園。

たった1時間の慣らし保育だけど、パパともママとも離れるのは今日が初めてだった。

先生に預け、ドア窓越しに見つめた貴女の目は、

どうしてなの?と言っているかのようだった。

やっぱり結構です!

そう言えたならどんなに嬉しかっただろう。

パパに促されてその場を離れる。

こっそり覗いた窓から、貴女が泣いている姿が見えて、貴女と同じようにママも泣いた。

ほら、やっぱりオリヴィアとママは一心同体。

 

いつも穏やかで、長々と泣いたりしないオリヴィア。

今まで見たことがない真っ赤な顔を見て、ずっと泣いていたのがわかった。

家に帰ってからも、ママの袖をずっと握って離れなかった。

お昼寝から目が覚めると、不安な顔で見まわし、ママを見つけてニッコリ微笑む。

まるで、もう一人にしないでね、と言っているかのように。

 

そんな姿がいじらしくて、1日中抱っこして過ごした。

 

母と子はこうやって、いくつものドアを、泣きながら開けていくものなのだろうか。

ドアの向こうには、新しい世界が広がっていて、

開けなければ得られない楽しいことがあると、

たくさんのドアを貴女と開けていきたいと思いながらも、

それでも、なぜ涙が溢れるのだろう。

 

小さな小さな私の宝物。

生まれてからずっと、いや、生まれる前からいつも一緒で、片時も離れたことはなかった。

ママと離れたらお腹が空くし、

ママだって、オリヴィアと離れたら、おっぱいが張って痛い。

いつも一緒じゃなきゃ、お互い困るでしょ?

 

いつものように穏やかな貴女の寝顔を見ながら思う。

 

いつか貴女は独り立ちする。

いつまでも一緒にいられるわけじゃない。

貴女は私のものではないんだから。

 

こう自分に言い聞かせ、涙に曇る日が、これからどれくらい訪れるのだろう。

 

これから永遠に、ママが全てだった貴女を恋しいと思い続ける。

ドアを開ける悲しさはきっと、ママだけに残っていくものなんだろう。

貴女の記憶には、新しい楽しい世界だけが広がっているのだ。

 

それでいいのよ。

貴女の悲しみはママに全部残して、

貴女は新しい世界を楽しんでくればいい。

何も心配することなんてないの、

ママはいつだって、おかえりの抱っこをしてあげる。