夫と些細なことで口論になりかけた。


夫は玄関ドアに思い切り八つ当たりして、犬の散歩へ出て1時間半ほど帰ってこなかった。


物に当たるのは前からで、昔住んでいた家のドアを蹴って破ったこともあるし、私にダイニングチェアを投げつけたこともある。


ダイニングチェアの時は、私に当たるより娘の仏壇に当たりかけて、「次やったら許さん!」と私が怒って夫は泣いて反省したはず。


またか、と思いつつ風呂上がりの子供の世話をしてご飯を食べさせ、食後相手をして過ごしてた。


ケンカして、外で気分を落ち着かせられるって幼児を抱えてる方からしたら贅沢なことだ。
勝手に行動できて羨ましいわ、とモヤモヤしながら。


帰った夫は、用意してある夕飯をスルーしてそのまま風呂へ入って、私の隣に敷いてある自分の布団を荒々しく別の部屋に運んで行った。


別に違う部屋で寝たいのはいいけど。
っていうか、まだ物に当たるくらいイライラしてるならもう少し外で頭冷やしてくれば良いのに。


いつも息子にデレデレしてるくせに、今日は息子が構って欲しそうにしてても無視だった。



とりあえず、犬のケージのある部屋に布団を敷いた夫に「息子、動物の毛アレルギーだから、もうその布団こっちの部屋に敷けないよ」と言いに行った。
ふてくされた顔で「もう俺ずっとこっちで寝るわ」。
あぁ、息子が夜中泣いても邪魔されず寝られますもんね。

「…これからずっと育児には関わらんってこと?」って聞いてみた。
一緒に寝るくらいしか、普段息子と関わる時間ないから。

「そうなるな」って返ってきた。



耳を疑う。
機嫌いい時や、他人のいるところじゃ息子にデレデレで「イクメン」気取ってるくせに。
何もしない宣言。


「休みもほとんど自分の用事で居ないし、寝食も別って、一緒に生活する意味あるのかな」って聞いたら、

「ないな」と。



力が抜けた。



私たちは再婚同士で、お互い前の結婚で長いこと子供ができなかった。
だけど再婚してすぐに1人目を授かり、夢のような幸せの中、産まれてしばらくして突然その子は天国へ戻っていった。


苦しかった。何をしても楽しくない、美味しくない。
機械的に仕事に行って、帰宅すれば毎日娘の仏壇の前で泣いていた。


どうしてももう一度あの子に会いたい。でももう子供を産むにはギリギリの年齢だった。
最後の気力を振り絞るように、妊娠したくて産婦人科に通った。


しばらくして息子を授かる事が出来た。


嬉しかった。でもまた私から去って行ってしまうんじゃないかと不安も大きかった。

元気に産まれてきてくれた息子を私たちは溺愛した。

今から思うと、私だけだったのかもしれない。


夫を、1人目を亡くしたあの辛い日々を共に過ごしてきた同士だと思ってた。


あの日々を一緒に生きてきたから、この先もなんとかやっていける。息子を愛してくれるなら、何があっても一緒にいようと思ってた。


でも妊活に通ったり、妊娠中に色々調べたのも私だけ。
夫は私ほどの強い気持ちはなかったんだろう。
私が勝手に突っ走ってたのかもしれない。
 

夫とは、同僚として出会って、その後何年もしてから付き合って、すぐ子供ができて。
燃えるような恋愛感情、とかはなかった。
でもなんというか、もっと優しい穏やかな気持ちは確かに持っていた。
恋愛のように浮き沈みのない、安定した愛情だと思ってた。


でも、その気持ちは今日消えたかもしれない。


夫としては、売り言葉に買い言葉だったのかもしれない。


でも発した言葉は消えない。


一緒にいる意味がない、かぁ。そうかぁ。


2度目の離婚か。
もうそれもいいかもしれない。


とりあえず、働かなきゃ。
何があっても息子のことは責任を持って育てて行く。