新聞記事の解釈の続きです

「メソトレキセートの効果が不十分なら生物学的製剤を使う」という記述ですが、生物学的製剤とは何でしょうか。

商品名は下記の6種で、それぞれの作用を考えてみましょう。
1)レミケード
2)エンブレル
3)アクテムラ
4)ヒュミラ
5)オレンシア
6)シンポニー

1)レミケードは「抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤」とあります。難しい名前ですが、此処を参照。
前回、自分で自分の関節を攻撃すると表現しましたが、麻疹や水疱瘡のウイルス感染の時に出来るような専用の武器である「抗体」があります。リウマチは作らなくても良い関節に対する抗体を作っているおかしくなった免疫細胞の働きが起こっていると考えられています。壊れた関節で起こる炎症の時にTNFαという抗体があり炎症が起こるから、その抗体を更に攻撃して免疫反応を抑えようという事になります。ですから 抗**抗体 となります。

炎症とは組織が治るために引き起こされる反応と理解していますが、炎症を抑えることによって関節破壊が止まれば薬剤としての意味はあるのかも知れません。しかし、攻撃→破壊→修理→炎症のサイクルを断ち切るものではありませんから、これでもリウマチが治るという概念は当てはまりません。

添付文書の<警告>の冒頭にはこうあります。
本剤投与により、結核、敗血症を含む重篤な感染症及び脱髄疾患の悪化等が報告されており、本剤との関連性は明らかではないが、悪性腫瘍の発現も報告されている。
自身の免疫機能全体が下がることになる が理解できるでしょうか。

2)エンブレルもレミケードと同じ範疇ですね「完全ヒト型可溶性TNFα/ LTαレセプター製剤」。
上記と同じ警告文書が冒頭にございます。

3)アクテムラは「ヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体」とあります。このIL-6はインターロイキンのNo.6ということでして、インターロイキンは伝達物質です。免疫システムで使われる物質で、警察無線の様な物だと思って下さい。これを阻害して免疫を何とかしようとする方法のようですが、<警告>の冒頭にはこうあります。
1.感染症 本剤投与により、敗血症、肺炎等の重篤な感染症があら われ、致命的な経過をたどることがある。
結局は「全免疫システムの低下」という構図は全く変わる事が無い訳ですね。

4)ヒュムラも「ヒト型抗ヒトTNFモノクローナル抗体製剤」で上記と同じです。警告文も同じです。

5)オレンシアは一風変わっています。「T細胞選択的共刺激調節剤」とあります。何のことか良く解らない作用です。調べて見ますと、白血球の中の、リンパ球の中の、T細胞を刺激して活性化させにくくする薬剤となっています。T細胞への活性化刺激を止める働きで、T細胞が活発にならないようにする事を目的としている。例えが難しいですが、派出所に駐在している警察官ではなく、県警本部を抑制するという感じでしょうか。1~4の薬剤よりも源流に近い所を阻害する。しかし、T細胞全ての働きは止めないと考えられており、作用機序は画期的だが効果は未知数であると開発元はHPで述べている(動画で)。 ~ T細胞の働きが阻害されれば免疫全体も阻害されると考えるのは当然だが、大丈夫だと思うという表現であり、理屈は通るが実際は分からんという解釈になってしまう。
冒頭の<警告>には今までと同じ文章が記載されている。
1. 本剤を投与された患者に,重篤な感染症等があらわれる ことがある。
副作用を抜粋するとこうです。
国内の臨床試験において,安全性評価対象223例中186例(83.4%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。 主な副作用は,上気道感染注1)76例(34.1%),上気道の炎症24例(10.8%),口内炎20例(9.0%),発疹注2)15例(6.7%), 高血圧13例(5.8%)等であった。

6)シンポニーも「ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤」で(5)以外と同じです。警告文も同じです。 ~ こちらも副作用を抜粋するとこうあります。
既存治療で効果不十分な関節リウマチ患者を対象に実施 した国内臨床試験における安全性評価対象症例581例中 449例(77.3%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認め られた。主なものは、鼻咽頭炎131例(22.5%)、上気道 感染66例(11.4%)、注射部位紅斑54例(9.3%)、注射部 位反応32例(5.5%)、咽頭炎32例(5.5%)であった。(承 認時)

5)、6)の副作用を見ると風邪を引きやすくなるようなので、免疫能力が全体的に落ちるのは避けられないようです。一部の過剰反応している免疫反応だけを抑える方法はいくら新薬が登場しても極めて困難である状態が続いています。薬剤と正しく付き合う方法は、一時的な利用に限るということです。これは医療そのものにも当てはまります。


生物由来製品で遺伝子組換えと書いてあります。農作物の遺伝子組換えは論議を呼んでいるのに、注射薬は普通に遺伝子組み換えなのですね。これは知りませんでした。

薬剤の添付文書は基本的にどなたでも見ることが可能です。ネットで得られない場合は調剤薬局に相談するのも1つの方法かと思います。
ご興味があれば一読されると良いかと。

必要が有ればプリントアウトして主治医と相談されると良いとは思うのですが、それに対する解答は「嫌なら止めましょうか?」「副作用を恐れてリウマチはそのままでいいのですか?」と言われると思われます。結局は薬剤を使う事へ促されると思います。使う事が正しいのだと信じているからです。

根本的に治す方法が無い現代の医学では、少しでも進行を遅らせるかも知れない薬剤を使う他になんら手段が無いので、医者は手持ちの札を使い切るまで、患者さんを脅してでも使おうとする事を知っておきましょう。


いわゆる「いい先生」に当たってしまうと、、、いい人過ぎて断りにくいから大変です。笑顔で「いい薬剤があるんですよ~」なんて親身に言われちゃう。