あたしたちのAのグループは、
それよりも他の活動を主としている。
それはここでは書けないのだけど、
仮に、ボランティアとしておきます。
ボランティアの集まりに行き始めた頃、
そこですぐに目にとまった女性がいた。
肌がきれいでかわいい人。
見た瞬間に胸がざわついた。
それはにっぴーの代わりにあたしにいろいろ教えてくれる美代子さんの妹。
江見子さん。
女の勘ってやつが、あたしにもあったらしい。
最初、彼はあまり江見子さんの話をしなかった。
他の人の話は男女関係なくしてくるのに。
彼女は、明るくてかわいくて、とてもあたしはかなわない。
彼女とあたしはあまり関係がないのだけど、
あたしの面倒を見てくれている美代子さんの妹である以上、
間接的に話を聞いたり、そばにいたりすることが当然ある。
彼があまり近付けたくなさそうな感じがした。
「妹と話した?」
「話してないよ」
「はなさんでいいよ」
だけどね、話す機会もやっぱりある。
とうとう彼が彼女の話をしてきたことがあった。
「江見ちゃんは俺をAに誘った人でね、」
わかってるよ。
あたしがこのボランティアに参加すると決めた時、
自分をボランティア(以下B)に誘ったのは、
元カノのお姉さんだと言った。
美代子さんのこと。
Aは元カノだけどって。
元カノっていうか、元カノではないんだけどって。
要は付き合う付き合わないくらいでやめたのかな?
今はなんでもないから、ヤキモチやくくらいなら、
Bに入るのやめてくれって。
それがまさか、”エミちゃん”だなんてさ。
最初は妹と言っていたのに、今は平気でそう呼ぶ。
あたしのことは、みんなの手前、キリシマちゃんと呼ぶ。
会社でのおじさんおばさんからの呼ばれ方と同じ。
ふざけてあたしにえみちゃんと呼んでも、
彼女のことが浮かんで複雑。
もうあたしのこと呼ばないでほしい。
”お前”でいいよ。
周りの人が、
「江見ちゃん昨日きてた?」
「きてたよ」
「じゃあまーぼーもやね?」(みんなはにっぴーのことまーぼーと呼ぶ)
そんなふうに2人はセットみたいに話す。
「最初にBの話きいたとき、
江見ちゃんよりもまーぼーのほうが先にやるって手あげたよね~」
そんなふうに、2人が特別だったかのように話す。
みんなが2人は付き合っていると認識していた関係だったのだろうか。
もしくは今もみんなは付き合っていると思っているんじゃないか。
そんな不安につぶされそうになっていたとき、
見てしまったんだ。
いくつか並んでいるテーブルの一角で、
2人、小声で話しているのか顔を寄せ合って晩ご飯を食べている姿を。
Bでは男女はなるべくわかれている。
話を聞くときもいすは男女別れて座る。
その中で男女仲良くごはん食べるなんて夫婦でない限りありえない。
たとえ彼氏彼女であってもあまり一緒にいないのに。
だから彼は
「Bでは俺に話しかけるなよ」
と言っていた。
すごくショックで涙が出そうだった。
そんな日に限って。
いつもは美代子さんたちの車で一緒に連れて帰ってもらうのに、
美代子さんは残らなくてはならなくて、
あたしはにっぴーの車に他の人たちと乗っていくことに。
ほとんどしゃべらなかった。
「どうした?元気ないな?」
「そんなことないよ」
「つまらないヤキモチやくならBに入るのやめてくれ」
その言葉を思い出し、必死にこらえる。
それから、江見子さんと話すときもなるべく普通にはした。
ただ、彼と江見子さんが2人でいたりするのを見たくないだけ。
時々しか彼女を見てないしよく知らないけど、
ちょっと気の強いイメージがついてきた。
彼がちょっと仲間でもめて悩んでいた。
彼の話しか聞いてないからかもしれないけど、
その相手キツイなぁって思った。
そしてそれは以前にも彼がもめていた相手だろうと予測がついた。
ただ、Bに入ってみて、そんなにキツそうな人って誰もいないの。
誰だ~?って思っていたけど、探ったりするのはやめた。
その人と話す機会があったら、ちょっと偏った見方をしてしまうといけないから。
でもすぐにまた別件で彼は同じ人ともめて、
そのときははっきり、その相手がわかった。
江見子さんだった。
やっぱり。
実は気が強いんだ。
彼もけっこう江見子さんに対する不信感をあたしに愚痴っていて、
内容も人物も詳細がわかって聞いていたので、
2人は昔は知らないけど今は、そういう関係ではないと、はっきりわかった。
そして昔もそんなに深い関係ではなかったんじゃないかと思う。
その直後江見子さんと話す機会があって、
性格の話で、○○座はどうで、とかそんな話で、
彼女が言った。
「まーぼーって典型だよね~!話が長い!くだらないことダラダラとさ~」
とか、
「すぐ怒るし」
「あ~確かに・・・でも本人は怒ってないって言いますよね」
「ぜったい怒ってるって~!こないだむかついたからもう言ってやった!
だから嫌われるんだよって!」
彼女はけっこう本気で言っていて、あんま笑ってなかった。
「よく言えましたね~」
「電話で言ったもん(笑)」
「会って言ったらこわいですよね(笑)」
「そんなん!もしなぐられたらすぐ警察だよ!!」
この会話で、彼女はけっこう彼にあきれてると思った。
彼がうちにいるとき、江見子さんやほかのメンバーと連絡とりあっていて、
翌日の話を決めないといけないのに、
江見子さんは疲れてるからメールにしてと言って彼の電話を切った。
なのに、他のメンバーからの電話は出て、10分くらい話したらしく、
相当彼のこと面倒がっているように見えた。
そういうのを見てて、あまり苦しいほどのヤキモチは抱かなくなった。
ただ、まったく嫉妬しないかと言うとそうではないけど、
2人一緒のところさえ見なければ大丈夫。
あと名前だね。
これはどうにもならないこと。
昔からあたしは呼び方になにか執着があった。
好きな人から名前で呼ばれたい。
元カノと同じ名前で、しかも元カノは名前で呼ばれていて、
あたしはちがう・・・
そのこだわりをどう捨てればいいの?
そう思うと、あたしをキリシマちゃんと呼ぶ人たちから逃げたくなる。
