1960年代初頭に、NASAで働いていた黒人女性たちの実話に基づくこの映画には、驚かされるポイントと心地よいポイントがてんこ盛りでした。
まず驚いたのは、その時代に黒人女性がNASAで専門職に就いていたことです。「さすがNASA!」と思いきや、管理職同様の仕事をさせながら肩書きは与えず、給与も低く、トイレは有色人種用を使わせるという「どっちなんだNASA!」的な複雑な構造の差別。
あからさまにバカにしたり、暴力的なことをしたりはしないけれども、心の中にはしっかり根付いている、頭の良い人たちの洗練された差別に対抗する3人の黒人女性たちの怒り方がそれぞれにかっこいい!
詳しく書いてしまうとネタばれになるので控えますが、3人に共通しているのは、毎日の生活の中で嫌というほど味わう理不尽に、いちいち声を荒げたり汚い言葉を使ったりということを一切しない点です。
理不尽だということは明確に意識しているから、心の中に煮えたぎる思いは常にあったはずですが、それを表現するタイミングと方法が実にスマートです。
我慢に我慢を重ね、ここぞというときに放った激しい矢のような怒りも、すぐに抑制することによって逆に相手を考え込ませ、恥じ入らせたキャサリン、淡々と言うべきことを言い続け拒絶され続けても、憤懣やるかたない思いは仲間内で発散しつつ粘り強く理屈を通し、ついに望むものを手に入れたドロシー、相手の知と情と良心に訴え、見事な「前例」となったメアリー。
3人3様の闘い方はどれも、「どうせ怒るならこんなふうに怒りたい」と思わされるような、知的でタフなすばらしい怒り方です。
そんな3人の姿勢に気圧されつつ、徐々に変わっていくNASAの同僚たちもやっぱりかっこいい。ドロシーの上司は「変化が大きすぎてついていくのが大変だわ」と、半ば負け惜しみのような言葉をつぶやきつつ、でも変化するのですから、尊敬に価します。
というわけで、とっても気持ちのいい映画でした。単純に、観たあとに「よし、私も頑張ろう」という思いにもなるし。そして何より、素敵な怒り方を勉強したい方におススメです。