昨日6月7日、関東甲信地方で梅雨入りが発表されました。


いよいよ本格的な雨の季節のスタートですね。



つい数日前までは夏日を記録するような暑い日もありましたが、これからは湿度の高いジメジメとした季節になります。


実は熱中症というのは真夏だけではなく、体がまだ暑さに慣れていない今の時期にも起こりやすいと言われています。


また、梅雨の時期は湿度が高いため汗が蒸発しにくく、体温調節がうまくいかないこともあります。


そして梅雨が明ければ、いよいよ本格的な夏がやってきます。


そんな中、今回は埼玉県からご依頼をいただきまして、埼玉県公式YouTubeで公開予定の「熱中症予防お手軽レシピ すったて」の動画制作をさせていただきましたので、そのお話をしたいと思います。



皆さん、「すったて」ってご存じでしょうか?すったては埼玉県を代表する郷土料理のひとつで、すり鉢でごまや味噌をすり、それを冷たい水でのばして作る汁に、豆腐やきゅうり、大葉、みょうがなどを入れて食べる夏の料理です。特に川越周辺、川島では昔から親しまれていて、農作業の合間に手軽に食べられる料理として受け継がれてきました。名前の由来も「すりたて」の状態で食べることから「すったて」と呼ばれるようになったと言われています。

よく「冷や汁と同じですか?」と聞かれることがあるのですが、似ているようで少し違います。どちらも味噌を使った冷たい郷土料理で、暑い夏を乗り切るために生まれた料理という共通点があります。


ただ、埼玉のすったては豆腐を使うのが特徴です。


一方、宮崎県などで食べられている冷や汁は、焼いたアジやイワシなどの魚をほぐして入れることが多いんですね。

つまり、たんぱく質源で見ると、すったては豆腐、冷や汁は魚という違いがあります。私は管理栄養士なので、つい栄養の話になってしまいますが、どちらも暑い時期に不足しがちなたんぱく質を補う工夫がされています。昔の人は「たんぱく質を摂りましょう」なんて言葉は使わなかったと思いますが、夏バテしないように知恵として受け継いできたんでしょうね。今回の動画は、そんな埼玉の郷土料理であるすったてを、熱中症予防という視点から紹介する内容になっています。熱中症予防というと、「こまめに水分を摂りましょう」という話をよく聞きますよね。もちろん水分補給はとても大切です。また、大量に汗をかいた時には、水分と一緒に塩分も失われるため、適切な塩分補給も必要になります。


ただ、ここで管理栄養士として一つお伝えしたいのが、「熱中症予防イコール塩をたくさん摂ること」ではないということです。

日本人はもともと塩分摂取量が多い国だと言われています。


厚生労働省が公表した令和6年の国民健康・栄養調査によると、日本人の食塩摂取量は平均9.6グラム、男性10.5グラム、女性8.9グラムとなっています。


令和6年度国民健康・栄養調査 


この12年間では最も低い値となりましたが、それでも健康日本21で掲げられている目標値である7グラムには届いていません。


つまり、日本人は減塩が進んできているとはいえ、依然として塩分を多く摂っている国民だと言えるんですね。  



また、日本では「塩研究」と呼ばれる有名な疫学研究も行われています。

この研究では、24時間蓄尿という方法を用いて、日本人が実際にどれくらい塩分を摂っているのかを詳しく調べています。

東京大学 学術講義 佐々木敏名誉教授 スライド


食事調査だけでは調味料の量などを正確に把握することが難しいのですが、尿中のナトリウム量を調べることで、より客観的な食塩摂取量を推定することができます。

その結果からも、日本人は世界的に見ても塩分摂取量が多いことが示されています。

一方で、人が生命を維持するために必要な最低限の食塩量は1日1.5グラム程度とも言われています。もちろん1.5グラムで生活しましょうという意味ではありません。


ただ、それだけ私たちは普段から十分な塩分を摂っているということです。


ですので、普段の生活で「熱中症が心配だから塩をたくさん摂ろう」と考える必要はありません。ただし、炎天下での作業やスポーツなどで大量に汗をかいた場合は別です。汗と一緒に水分だけでなくナトリウムも失われますので、その時は水分とともに塩分も補給することが大切になります。


つまり大切なのは、「とにかく塩を摂る」ではなく、自分の活動量や汗の量に合わせて上手に補給することなんですね。

そして、私が管理栄養士としてもっと大事だと思っているのが、「しっかり食事を摂ること」です。熱中症予防というと、水分や塩分ばかりが注目されがちですが、実は食事も非常に重要なんです。


暑くなると食欲が落ちて、「そうめんだけ」「飲み物だけ」「アイスだけ」で済ませてしまう方もいらっしゃいます。しかし、食事量が減るとエネルギー不足になり、低血糖を起こしやすくなったり、疲れやすくなったりします。体力が落ちることで、結果として熱中症のリスクを高めることにもつながります。


実は私が勤務している福祉施設でも、以前印象に残っている出来事がありました。

ある利用者さんが、その日の不安な気持ちや精神的な不調から朝食をほとんど食べることができなかったんです。

その後、少し気持ちが落ち着いたため外での活動に参加されたのですが、活動中に熱中症を起こしてしまい、大変なことになったことがありました。

もちろん熱中症の原因は一つではありません。気温や湿度、その日の体調、水分補給の状況など様々な要因が重なって起こります。しかし、その出来事を通して改めて感じたのは、「食事を摂ることの大切さ」でした。私たちは食事からエネルギーだけでなく、水分やミネラルも補給しています。 



熱中症予防は単純に水を飲めばいいというものではなく、「水分補給」「適切な塩分補給」「しっかり食事を摂ること」「睡眠や休養」

この4つが揃って初めて、暑さに負けない体づくりにつながるんですね。

今回ご紹介したすったては、味噌による適度な塩分、豆腐によるたんぱく質、そしてきゅうりや大葉、みょうがなどの野菜も一緒に摂ることができます。

さらに、ご飯やうどんと組み合わせればエネルギー補給にもなります。

まさに夏を乗り切るための先人の知恵が詰まった料理だなと改めて感じました。

今回の動画制作では、撮影だけではなく、テロップの内容や見せ方なども考えながら作成しました。


普段はラジオでお話しすることが多いので、言葉だけで伝えることには慣れているのですが、動画は映像で伝える難しさがあります。

どの場面を映すのか、どんなテロップなら分かりやすいのか、実際に作ってみると本当に奥が深いなと感じました。


また、完成した動画を確認した際には、音声が入っていないというご連絡もあり、書き出しやデータの確認などを行いました。


動画制作は撮影して終わりではなく、公開されるまで確認作業が続くんだなと改めて勉強になりました。

今回の動画制作を通して、改めて埼玉県には素晴らしい郷土料理がたくさんあることを実感しました。


これから暑さが本格化していきます。

ぜひ皆さんも、水分補給だけでなく、しっかり食事を摂りながら熱中症予防をしていただけたらと思います。

そして機会がありましたら、埼玉の郷土料理「すったて」もぜひ作ってみてくださいね。