仕事帰り、奥武島へ。


何も食べたくなくて、缶コーヒーをひとつ買い、船着場に足を下ろしました。           


海は夕暮れで、鈍色。 


魚が跳ねる音がして、その音に、私とねこが同時に振り向きました。


 いつの間にか、一匹のねこがそばに座っていたのです

。 

海をのぞき込むと、ウミヘビの赤ちゃんらしきものが泳いでいました。 


「すごい。可愛い。めずらしくない?」


 誰に聞かせるでもなく、ひとりで小さく興奮していると、ねこがまとわりつき、膝に乗ってきました。


 ゴロゴロと喉を鳴らしながら、安心したように目を閉じます。


 「海に落ちちゃうから、気をつけてね」そう声をかけながら、膝の上のあたたかさに、心がほどけました。


宝くじが当たったら、と思うこともあります笑


 でも、どんなにお金が手に入っても、きっと私は、この時間を大切にすることは変わらない。 


健康で、大きな不足もなく、好きな場所に自分の足で来られること。


 それだけで、手にできる平和がある。


魚がまた跳ねて、ねこと一緒に顔を上げる。

 

ただ、それだけ。 


ただ、平和なひととき。