ヒトが生活する1年間の中で、春はどのような色をしているのだろうか。
テレビ番組では、ヒトの遺伝子に違いがあることをよく目にする。遺伝子のタイプが異なることでモノの感覚にも個性が出るようだ。「うまい」という人に対して「まずい」という人がいたり、同じ肩揉みでも「痛い」に対して「えっ、気持ちいいじゃん」…、「あのヒトすごく好き」に対して「私は裏があると思う」という感覚が神経に沿ってアタマの中へ走っていく。しかし、ヒトが他の動物とは違って進化できたのは『言語』という道具を手に入れて法や道徳を共有する社会を組み立てたからだと言われている。言語を共有することで、感覚や価値観が参考となる真ん中のゾーンと例外ゾーンが見えているのが現代社会になる。はじめにもどると、春の色は果たして『ピンク』?
Kは花粉症が3月から始まり他周囲よりも長引くため、春の季節をあまり好きではない。どちらかと言えば。黄色と感じる季節である。Aは春が いちばん好きだというが、Kには春という季節から少しも色気を感じ取ることができない。
いつも放課後はAOと3人で勉強をしていると、一人の女性が近寄ってきた。気の強そうな顔…。看護助手をしてたらしいが、最近では看護助手をやっていた人がもっと上を目指して看護学校に入学するパターンが多くなっているらしい。
「あなたたち、なにやってんの。私も混ぜてくれない。私はNね。よろしくね。みんな、彼女いなそうだよね。はははは。よろしく。」
Nの目力にも驚いたが、初対面からストレートパンチを出してくるため除け切ることができなかった。しかし、Nが入ることで女性の声がグループ内にあるため、それにつられてもう一人も進入してきた。名前はYという女の子で、服からカビ臭い匂いがしたためちょっと驚いた。これを本人はどう感じているのか?クサイ人は自分の臭みや周囲の臭みに対して鈍感なのかもしれない。





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昨日は交番の前で指名手配を眺めていたために警察官から取り調べを受けた。広報的なものを見ていただけなのになぜあやしまれるのだろうか…。やはりKの姿、行動、顔面にはヘンな影が見えていたのだろうか。Kは消防官であったが、現役の頃から隣り合わせの警察官に感謝していた。火事や救急の現場では、消防本部にも警察本部にも通報が流れ、どちらも急いで出動する。現場が事件に関連していなければ警察官は現場の警備にまわるため、救急搬送や火事の鎮火が確認できなければ彼らも戻れない。交番のお巡りさんが頑張ってくれるため通りがかりのやじうまを防止できる。中には、SのようにYoutubeTwitterに投稿するために消防隊やレスキュー隊、救急隊の活動を阻害する者もいる。―もし自分がベランダから身を乗り出して叫んでいたり、自分が血を出して倒れていたり、苦しくて助けを呼んでいる情報がテレビやネットにあったら悲しい―
朝から恐るおそる教室へ入ると、Sはいつもどおり。Bもとくにいつもと違った電波は発信していなかった。女子のコソコソがKには向かってなかったため、安心して午前の授業を受けた。昼休みになると、声が低く気持ち悪い笑い方をするOが近づいてきた。
「どうも、Kさん。3年間は長いと思いますので是非よろしくお願いします。やはり、社会に出てから高校生上がりの生徒を見ると非常識のカタマリですよね。デヘヘ。どうですか。タイプの子はできましたか?」
といいながら一緒に昼休みの食事をすることになった。Kはいないことを即答したが、Oは相変わらず笑いで返してくる。―誰かが後ろにいる…?まさかヤツか?―と思ったら、Aが何か言いたげな顔で立っているのである。
「あの、あの、あの。Aっす。自分もいいっすか。自分、●●県から来まして。こっちのこと、まったくわかりません。よろしくお願いします。」
どうやら、学校生活は男子3人のグループから始まり、Aの不思議な人間性をいじりながら盛り上がりが生まれていた。これを見た、Bは真ん中から疎外されていることにふてくされた表情をあからさまにしている。相当プライドが高いため、自分から門を開けようとはしないのだ。Nはボケーっとしながら時の流れに身をまかせ、Sは相変わらずスマホに携帯式バッテリーを接続してゲームに熱中している。授業中にPSPもやるくらいで、入学1か月目から呼び出しを受けていた。女子はすでにグループをつくって昼休みを過ごして盛り上がっている。しかし、このグループも、時間の流れとともに編成がたくさんあり、裏切りやいじめがあることは男子には予想できていない。

放課後、Kは机の中から教科書を出していると、Oの笑い声が近づいてきた。

「ちょっと勉強していきません?今のうち予習しておきましょうよ。」

看護学校には予習という文字がないことをこの時点で2人は知らないのである。Kも勉強の意欲が高いため、Oの考えに賛成してすぐに解剖学の教科書を準備した。すると、やはり後ろにも気配があり、3人で解剖学の勉強を始めた。

「白血病とは?」

(1)定義

造血幹細胞が骨髄の中で腫瘍化し、骨髄が白血病細胞で占領される状態。本来、この細胞は骨髄の中で赤血球や白血球や血小板のどれかに変身ためのスタンバイをする。ミクロの世界でイメージがつかないが、この細胞ががん細胞に変身することを白血病という。通常の血液は赤血球の色で赤く見えるが、がん化した白血球が異常に殖えて白く見えることから白血病といわれるようだ。
(2)様々な原因

①他疾患との関連…遺伝子異常で発症する血液の疾患は、白血病を起こす恐れがある。

②放射線…化学物質、抗がん剤も含む。

(3)分類…急性白血病と慢性白血病のどちらにも骨髄性白血病とリンパ性白血病がある。
(4)病理

骨髄内にがん細胞がいると、正常に変身している骨髄幹細胞のスペースを占拠して邪魔をする。そのため、出血や貧血や細菌やウイルスの侵入に対して、119番の通報が入っても血管の中に消防車や救急車が走らない。いつも貧血状態で、出血してしまうと止まらず、傷口が感染してしまう。それ以降も正常な血液細胞の減少が起こることで免疫力がどんどん低下してしまうことになるのだ。

―はたして、3人は3年後にこれらをしっかりと覚えているのであろうか。3人の表情は苦笑い。さすがにOも笑い声がない。―



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今日は、薬理の授業がある。少し昔を振り返るが、Kは大学で救急救命士の勉強をして国家試験で資格をつかんだが、手術前のKにとって試験勉強はつらいというよりは『命を救うためのもの』として頭の中に知識が吸い付いた。救急救命士は、医師がいてもいなくても医師の指示があれば、救急救命処置を行うことを業とする者である。普通にイメージすれば、病院の医者が電話で救急救命士に指示を行なう。看護師も同じく医師の指示のもとで医療行為をおこなう。救急救命士は薬剤が1種類の投与しか認定されていないが、看護師は医師から指示を受けた薬剤であればたくさんの種類を投与できるのである。救急救命士の薬は心臓が止まっているような危機的な場合に使うため、それ以外は早く病院へ運べということになる。それに対して看護師の使う薬は、患者の心や体が最善な状態に向かうようにいろんな種類や分量を使い分けていく。
授業が始まると、眉間にシワを寄せている子もいれば、顔が45度傾いていたり、あきらめて90度になったり教科書にオデコがくっついている子もいる。薬理はカタカナが多く、ナマエが長くて似たような名称がある。副作用が複数あるため頭の中が噴火してしまうのである。Sはあいかわらずスマホばかりいじっている。パズドラと思っていたが、噂ではTwitterにクラスの人の写真が掲載されているとか…。Kは彼のスマホの向きが少し恐くなってきた。―どうせなら、寝ている子の方がいいね!って思うんだけど…―睡眠薬の説明が始まった。若くて健康な人は睡眠薬を使用しなくてもぐっすり眠れることが近くではっきりとわかる。Kは廊下側の席からクラスをすこし見たが、目の玉だけを動かすだけでは見えるものに限界があった。Bはいつもながら元気にしているようだ。―恐いというよりは怪しい―昔のヤンキーのように椅子を90度にして座っているが、こっちを向いて視線が合えば逸らしてくる。Kは、彼の視線で集中力が切れてしまい、講師の説明がアタマに入らなくなってしまったのである。
少し経つと、覚せい剤の説明がはじまった。一般社会の中で絶対に携わってはいけないものだと思っていた。しかし、医療の場では覚せい剤や麻薬、毒物、劇物が扱われる。やはり医師が指示を出せば看護師もこれらを投与できる。Kは驚いたが、間違った取扱い方法をしないように集中して聞き直した。パーキンソン病といって、少しずつ体の動きが鈍くなってしまうものを教わった。Kが手術した大脳とは違って中脳の病気。中脳は体を動かしたりバランスを保つために大切な役目があり、体を動かすときにそこからドパミンというものが発射される。しかし、この病気は中脳からうまく発射できないため『覚せい剤』というものでフォローしていくのだ。
―あれ、気付けばBの向きが真っ直ぐに。授業中なのにフードをかぶっているよ…。フードで顏が見えないけど、恐ろしいし、講師に失礼だよ…。―Bの握っていたペンが小型ナイフに見えてしょうがなかった。次は麻薬の説明がおこなわれた。これもちょっと…。麻薬の説明がたくさん飛んでくるにつれて、Bは少しずつ机にシャットダウンしていた。Kから顔がのぞかれないように教科書で顔面のセキュリティをかけていた。麻薬の代表的な使用方法は、がんや骨折や内臓痛など苦痛をともなうものに対し鎮痛作用がある。飲んだり、貼ったり、注射だったり。量を間違えると、薬物依存が強く精神的におかしい人になることは誰でも知っている。しかし、正しい人が正しく使うことで、病気と闘う苦痛から最後をらくにするモノのひとつになっている。Bは何をしてきたのかは分からないが、安全な看護師になってほしいと願った。
あまり力んで目をよこにしていると教壇側の講師からバカに思われるため、これ以上のことはやめた。帰り道、看護学校からバス停まで歩く途中の交番で指名手配者の写真を少し見た。少しじゃなかった。彼と同じ顔はいなかった…。でも、似せたくなるのはなぜだろう?少しでも、目にクマがあったり…輪郭が同じだったり…背が低かったり…住所が近かったり…。
「どうしました?なにかありましたか?聞きたいことがありますので、中に来てください。」
Kは、看護学校の生徒へ見られているんじゃないか、またはSに写メをされたらTwitterに載せられるという恐怖感を抑えながら、捕まえられた右手が爆発しないように交番へ入った。
―こっちも、あやしい顔だなと感じるけど、あっちもそう感じてるのかな…―
Kはバス停で雨に打たれながら自分のカオに自信を消失し、ちょっとうつになった。



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