へんないきもの |   EMA THE FROG

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    roukodama blog

昨日の晩は、娘の沐浴(お風呂)がうまくできなくて落ち込んでおりました。娘はまだ生後2週間ほどなので、浮き輪みたくシューシュー息を吹き込んで膨らませるタイプのベビーバス(というのかしら)を使っているのですが、なんつうか、赤ちゃんを不安がらせずにお風呂に入れるって結構難しいです。結局ビービー泣かれっぱなしで激落ち。「入れ方が悪かったんじゃなくて、きっとお腹空いてたから泣いたんだよ」なんて嫁に励ましてもらいつつ、youtubeで「初めての沐浴」みたいな映像を繰り返し見てました(それにしても赤ちゃんてみんな顔違うね。当たり前だけど)。

さて、子育て初心者の僕と嫁が赤ちゃんにそうやって翻弄されている間、うちの長女であるエマ姫はどんな塩梅かと言いますと、

はっきり、超不機嫌です。

無理もないわけです。つい数週間前までは常に女王様ばりの待遇を受けていた(まあそこまででないにせよ、少なくとも僕らの事を独占する事はできたわけで)のに、突然おばあちゃん家(嫁の実家)に1週間も預けられた挙句、やっと家に戻って来てみれば、パパママの関心を釘付けにする「へんないきもの」がいる。そら意味わかんないよね。

もう1年以上一緒に暮らしてるんだもの、エマのそんな気持ちが分からぬ僕らじゃない。ちょうど年末年始の休暇中だったんで僕が散歩に連れて行き、エマの大好きなボール遊びにこれでもかというくらいつきあってあげたりして、何とかかんとかご機嫌を取ろうと頑張ったわけです。少なくとも僕の目には、散歩中(散歩と言うか、運動?)のエマはとても楽しそうに見え、安心した。

日が暮れてエマお気に入りのボールが見えなくなったので、僕らは家路についた。リードを引っ張るエマの力はいつもよりも強いくらいで、リード付けて歩くのが大嫌いだった赤ちゃんの頃が嘘みたく、「早くかえろう!」と言わんばかりにグイグイ僕の手を引く。エマは頭のいい子だから、これから戻る家にあの「へんないきもの」がいる事は分かっているはずだった。むしろ、僕のほうが心配になってしまった。この子はもしかしたら、すごく我慢してるんじゃないか、本当は帰りたくないのに、僕を安心させる為に、いつも以上にすごい勢いで僕を引っ張るんじゃないか。

エレベーターを降てすぐ、その心配がほぼ的中していた事を僕は知った。エマはこれまで見た事のないほど複雑な表情を浮かべて、その場から動かなくなってしまった。家まであと10メートル位のエレベーターホールで、エマは目に涙をいっぱい溜めて、その場から動かなくなってしまった。

日が暮れ、それでもまだ照明のついていないエレベーターホールは暗く、その中で、エマが僕を見つめる瞳だけが、やけにはっきりと見えた。「どうしたの?」と僕は一応聞いてみたが、どうしたもこうしたもなかった。エマは、帰りたくないのだ。家に戻ってしまえば、パパママの目は常にあの「へんないきもの」に注がれる事になると分かっているんだから。

僕は無言で、エマのそばに腰を下ろした。数秒の間、エマは何か気まずそうに僕から視線を逸らしていたが、やがて我慢しきれなくなったように、突然僕の膝の上に飛び乗ってきた。

僕は何も言えなくて、そういう自分が情けなくて、むしろ自分が慰められる為とでも言うようなダサい感じで、両腕の中のエマをぎゅっとした。やがて、エマはちょっとだけ面倒臭そうに僕を見上げ、「さあかえろう」とでも言うように僕の頬を一回だけ舐めた。

…なんて切ない場面も何度か経験しつつ、なんとかかんとか、エマも「へんないきもの」の存在を認めてくれ始めたようで。エレベーターホールで見せたあの悲しそうな顔を見るよりは、「あたちともあそぶでしゅ!」と元気に不機嫌でいてくれたほうがいくらかましだ。それにね、エマはエマで赤ちゃんの事が気になってしょうがないんだ。赤ちゃんが泣くと、僕ら以上にオロオロしてる姿、何度も見てんだからね。ミルクあげてれば、こそこそ近づいてきて足を舐めてあげてたり、踏んずけたりしないように歩く場所に気を遣ってたり、そういうの知ってんだから。

それにきっと、時間がたてばパパママと遊ぶより、ずっと楽しい親友になれるって。