看取り介護とは、これ以上回復が見込めない方に対して、ご希望に添った介護を行いながら、終末期の旅立ちに寄り添い見守る仕事です。

看取り介護を行える介護施設は、介護保険法で定められた条件を満たしている施設だけです。特に多いのが、特別養護老人ホームや老人保健施設などの入所型の施設です。しかし近年は、訪問介護でも看取り介護を行う施設が増えてきました。介護施設において介護士が行う看取りケアは、次の5つの段階を経過して行われます。

1段階目は、入所期と呼ばれています。利用者様に、施設での生活に慣れていただく期間です。終末期の過ごし方についての希望をご本人やご家族にヒアリングし、どのような介護を提供するかを確かめる時期でもあります。

2段階目は、安定期です。施設での暮らしに慣れてきて、心身ともに安定している時期です。3段階目は、不安定期です。食欲の減退や体重の減少、病気の悪化など、衰弱が進行していく時期です。適切なケアを行うと同時に、ご本人やご家族に現状と今後の予測や対応などについて説明し、今後の意向を確認します。

4段階目に、終末期が訪れます。症状の悪化や衰弱の進行が著しくなっている状態です。適切なケアを提供しながら、最期に会っておきたい人やご家族が旅立ちに立ち会えるよう手配をします。危篤状態となり、旅立って逝かれる時期です。

そして最後の5段階目が、看取り後です。ご遺族の希望を尊重しながら必要なケアや、医師・葬儀会社への連絡などを行います。この一連のプロセスを把握し心構えをしておくだけで、介護士として利用者様やご家族に落ち着いて寄り添えるでしょう。

令和2年度の厚生労働白書によると、2040年を迎える頃には日本人の死者は年間168万人を超えるといわれています。その理由の一つに、団塊世代と呼ばれる年代が90代になることが挙げられます。そして、死亡数はその後30年増えていくでしょう。

自宅や施設で死期を迎えるのが当たり前になっていく世の中で、介護士の役割として看取り介護は避けて通れないものです。死を目の前にして本人や家族とどう接するのが正しいのか、答えが見つからないときもあるでしょう。

自宅介護での看取り介護は、介護士も終末期に関わる一人の人間となります。家族と本人を交えてどのような最後を迎えたいのか、常日頃話し合っておくべきでしょう。介護士の役割は死への旅立ちの準備を手伝っているという冷静さと思いやりを持つことといえます。

行う業務は、一般の介護業務と同様です。しかし不安定期と呼ばれる体調がすぐれない時期が来た時に、慌てず感情的にならないように注意が必要です。家族の気持ちを優先し、家族へのケアも介護士にとっては重要な仕事の一つだからです。

不安定期から終末期までには、家族の心の準備も必要です。そのため、医療的知識で説明を行うこともあります。施設介護の場合、死期を迎える瞬間に立ち会うのは家族ではなく自分かもしれません。その場合の家族の精神的負担も考えてあげられるようにしたいものです。

仕事とはいえ、人生の最後を看取る事は人間とは何かを考えさせられます。介護士はみんな「勉強になった」と振り返ります。仕事とはいえ、ここまで人間について深く考える仕事はないでしょう。介護士が看取りとしっかり向き合うための心構えは、こちらでも触れられています>>http://endof-lifecare.com