『LOST  FAMILY』

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『LOST  FAMILY』 第5話

(たしか、真央[妹]はジーンズをはいていたはず。
でも、目の前の遺体はピンクのズボンを履いている。
・・・ってことは、この遺体は真央ではない・・・?)
美咲は、目の前の遺体が家族ではない。
と思うと、遺体を見るのが急に気持ち悪くなってきました。
しかし、先生は、美咲が自分の家族の遺体を見るのを
ためらっていると勘違いしたらしく、
美咲に代わり、毛布をすっとめくった。


(やっぱり、真央じゃない。髪も背丈も全然違う。)
そう確信した美咲は、思わず目を覆ってしまいました。
そして、今さら人違いだと言いにくくなり、
「あのー・・・。」
と、小さな声で言いました。


しかし、先生はそんな美咲の様子に気付くはずもなく、
もちろん、美咲の声も聞こえていないようで、
続けて、後の二人の遺体の毛布もめくりました。
そして、美咲を気遣うように
「お気の毒様です。ご家族様に間違いありませんか。」
と美咲に聞きました。


(こっちの遺体もお母さんと、おばあちゃんじゃない。
だって、服装も違うし、体つきも違う。)
人違いだったと確信した美咲は勇気を出して、
「あのー、私の家族ではなかったみたいです。」
と言いました。
すると、まわりにいた人々は
そろって豆鉄砲を食らったような顔をして、
「それは本当かい???」
と、聞き返してきました。
美咲は、
「はい、3人とも服装や体格が私の家族と全然違います。」
と答えました。


「そうだったんですか。
それは申し訳ないことをしてしまった。
しかし、あなたの家族でなかったことが幸いです。
ご足労をおかけいたしました。」
駅員は美咲にそういうと、
再び駅まで車を走らせてくれました。

『LOST FAMIRY』 第4話

「実はですねー。先ほどの‘爆発物騒動はイタズラだった。’
というアナウンスは、お客様の混乱を避けるために、
ウソの放送を流したのです。実際は爆発は起きました。
そして、残念ですが3名の犠牲者がでたようです。
詳しいことは、まだ連絡が入ってきていませんが、
3名の尊い命が奪われました。
その中には、少女も含まれているようです。
只今、身元の確認をしているところなので、
病院まで、行ってもらえますか?
くわしいことは、そちらで聞いてください。」


「・・・。」
美咲は、なぜか声も涙もでませんでした。
ただ、体がずぅっとガクガク震えているだけでした。


「お譲ちゃん、大丈夫ですか?」
駅員にそう聞かれると、
美咲は気を強く持とうと自分に言い聞かせ
「大丈夫です!」
と、強気に答えました。


美咲は病院まで送ってもらうための車の中でした。
車から見える外の景色は、
自分が住んでる世界とは別の世界のように見えました。
異次元の世界にいるような気分だったのです。
(あの時、私がトイレさえ行かなければよかったのに。
でもなぜ、私の家族だけが犠牲になったの?
やっぱり、犯人はあの外国人?)
いろんな思いが美咲の頭の中をよぎりました。


病院へ着いて、霊安室まで案内されました。
霊安室は薄暗くて冷たい感じがしました。
そこには、毛布を掛けられた3人の遺体が横たわっています。


「では、ご確認お願いします。」
病院の先生らしき人に言われました。
美咲は、両手を合わせて拝んでから、
子供の遺体の毛布を、足の方からめくりました。
子供の足には、まだ、血をふき取った跡が残っています。


(あれっ・・・?)
美咲はふと思いました。




『LOST  FAMILY』 第3話

『お知らせいたします。
先ほどの‘爆発物をしかけた’という連絡は、
車内を点検いたしました結果、イタズラだということが判明いたしました。
皆様、お忙しい中大変ご心配をおかけいたしました。』


ホームはアナウンスを聞いた人々で、ざっと、ざわめきだしました。
「なーんだ。いたずらだったの。脅かさないで!」
美咲は、思わず声を上げてひとりごとを言ってしまいました。


(じゃあ、お母さんたちはいったいどこへいってしまったの?)
美咲は、ホームをぐるっと見わたすと、
人々を誘導している駅員を見つけました。
(そうだ、駅員さんなら知っているかもしれない。聞いてみよう。)
そう思った美咲は、駅員のところまで駆け寄りました。


「すみません。人を探してるんですけど・・・。」
美咲が不安げに聞くと、駅員は驚いた様子で、
「えーっ!なんだってー?」
っと、聞き返してきました。
美咲はもう一度、
「母と祖母と8歳になる妹を探してるのですが、
見かけませんでしたか?」
と大きな声で聞くと、駅員は慌てた様子で、
「まさか!お譲ちゃんの家族だったのか!
お譲ちゃん、ここでは話しにくいのでちょっと付いてきてくれるかい?」
というと、ホームの端のほうにある駅員室まで、
美咲を連れて行きました。


美咲は、
(やっぱりお母さんたちに何か起こったんだ。)
そう思うと、心臓がバクバクと動き、手足がブルブルと震え、
冷静を保とうと思いましたが、駅員室に着くまで
まっすぐ歩くのがやっとでした。


駅員室に入ると、駅員はこう切り出しました。
「いいかい、お譲ちゃん、落ち着いて聞いてね・・・。」
美咲は、(この状況から落ち着けなんてムリよ。)
と心の中で思いましたが、母たちの事を早く聞きたいと思い
声を震わせて、
「はい。」
と答えました。