猫と裁判について、たくさんの方に読んでいただき、ありがとうございました。

いろんな意味で、ここまで考えを巡らせた作品もなかったかと思います。

私なりに納得のできる結末を妄想してみました。


作品と私たちを繋いでくれた獏さんの片桐弁護士。
2年前に最愛の妻を亡くし、最後まで啓子を見放さず 、懸命に向き合ってくれた彼に活躍してもらいたかった。

以下、拙い私の妄想です。ご容赦ください。

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独房で自殺を謀った啓子が一命をとりとめた。

「……私には、死ぬ権利すらないの?」

口の中にこもる声で、啓子はつぶやいた。
ガラスを隔てて片桐弁護士は奥歯を噛み締めた。

「高林さん。私は怒っているんですよ」

言葉とは裏腹に、片桐弁護士は優しく響く声で語りかけた。

「高林さんは憲法の13条をご存じですか?」

「私には、そんな、難しい話は、……わかりません」

片桐弁護士は分厚い六法を広げ、ゆっくりと読み上げた。

「第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」

読み上げたそのページをゆっくりと啓子に見せながら 、片桐弁護士は静かに続ける。

「“公共の福祉”とは、簡単に言えば他人の権利を侵さない、他人に迷惑を掛けないと言うこと。他人の権利を侵さない限り、高林さん。あなたの人権は尊重され 、あなたは、自由だ。高林さん。この条文はこう言われているんですよ」

片桐弁護士が本を閉じる音を聞いて、啓子がゆっくりと顔を上げた。

「「幸福追求権」ですよ。高林さん。憲法には幸福を追求する権利が印されているんです。運用上は語弊がありますが、あなたには幸せになる権利がある。あなたは法律に見放されたと思っている。救ってくれない と思っている。でも、あなたは自分の権利を行使したことがありますか? 義務ではありません。権利は自ら掴まなければ何もしてくれません」

「でも、私なんかが……」

「でも、あなたは他人の人生を奪った。この事実は変わりません。ですから、私はあなたに罰を与えたい。 弁護士としてではなく、一人の人間として」

そう言うと、片桐弁護士は厳しい顔をして、啓子を見つめた。

「生きなさい。
沢渡の奪ってしまった人生の分まで、生きなさい。
守れなかった我が子の分まで。
守れなかったミーちゃんの分まで。
生きたくても生きられなかった、私の妻の分まで、生きてください。
そして自分の力で幸せになってください。
それが、あなたにとっての、一番の罰です」

啓子は再び俯いた。

「だから私は怒っているんですよ。
死んだりしたら、絶対に許しません!!
幸せを知って、人生をまっとうして、人生の最期に命の重さと自分の罪を知ってください。 ミーちゃんが救ってくれた命を投げたしたら、あなたの大切なミーちゃんが一番悲しむんじゃないですか? 」

片桐の優しい声に、啓子は片桐に出会ってから初めて 、静かに涙を落とした。

「本当にミーちゃんを愛していたのなら、あなたは生きなくては、いけませんね。」

無機質な空間に、片桐の優しい声が響く。
ガラスの向こうから小さな嗚咽が聞こえる。
片桐は微笑んで、痩せたその肩が小さく震えるのを、 静かに静かに見守っていた。

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稚拙な文章で大変申し訳ありません。

自己満足の塊です!!

片桐さんの設定を活かしてほしかった!!

ふと、アンパンマンの歌がよぎりまして。

「何のために生まれて、何をして生きるのか。 答えられないなんて、そんなのは嫌だ!!」

幼少期にアンパンマンの道を必ず通ってくる日本人は 、なやせさんの「幸福論」を身に付けている。

だからつらいとき悲しいとき、なやせさんの歌を思い出して、自分のため、人のために、踏ん張れる国民だ と思っています。

「生きることが罰だ」 なんて、本当は言ってはいけないけれど、虫酸の走るような正論だろうとも、希望を持ちたかったんです!!

啓子の「生きる価値」は、命の重さを知ることだと。

そのためには、啓子は自らの人権を知らなくてはならない。

片桐さんには、死のための後押しではなく、生きるための後押しをしてほしかったので。

パンドラの箱には、最後に希望が待っていないといけないですよね!!