うちのばーさんはいろいろ激しい。

まず持病がハンパない。
喘息に糖尿ときたもんだ。
冬になると、入退院が恒例行事になっちゃう。
入院したら、ベッドの上でずーっと寝たきり状態になっちゃうもんだから(移動ですら車椅子)、退院してきたら筋肉なんてほとんどない。


自力歩行?無理無理無理無理、かたつむりかたつむり。かたつむり
実際、かたつむりのほうがまだシャキシャキ動けるくらい。
居宅リハビリを何ヶ月も続けて、やっとこさ自力でトイレにいける程度まで回復できるかできないか。
足の裏なんて、ずーっと床と仲良ししちゃう。
かかとを上げて歩くなんて夢のまた夢。
弓道やらせたら合格完璧合格みたいなすり足で歩くの。


でも、それは冬の話。
ヤツが本気を出すのは春、遅い雪解けが北海道を、白から緑に塗り替えてから。

とはいっても、去年は全然本気出さなかった。
眠れる獅子だかなんだか知らないけど、外出したのなんて片手で数えられる程度だもんね。
私の記憶違いじゃなかったら、だけど。


ところがどっこい、今年のばーさんは本気だ。
本気と書いてマジだ。足袋と書いてタビだ。
余談だが、我が家の雑種猫タカノリ君は、足の先が白いからタビ猫だ。

桜満開の季節になったので、TVで流れる桜のニュースに合わせてちょいと声をかけてみる。


 「ばーちゃん、桜きれいだね」
 「ほんとだねー、満開だねぇ」


オーケィ、話は通じてる。感度は良好だ。
バカにしてるわけじゃないよ、ちゃんと確認してるだけ。
なんせ84歳だからね、耳も遠いし思考も怪しい。
こっちが必死で送信しても、受信ができなきゃ意味がない。
続けて声をかけてみる。


 「こっちでも咲いたら、車で見に行ってみるかい?」
 「そうだねぇ、どっか咲いてるとこあるかい?」


HIT。
いやむしろHIT!!
ばーさんの大好きな釣り番組で、魚がかかったときに流れるちょっと激し目のテーマソングが脳内で流れる。
これはいける!いってみせる!!


 「塩狩峠のとこどうだろう、一目千本桜ってなってたけど」
 「あそこかい。あそこ桜あるのかい」


一目千本桜って言ったじゃんっっ!!?
ちょっとした受信エラーを吐かれた気分。
でもめげないもんね。
再送信!


 「うん、ねーちゃんも満開の時期に通ったことないからわかんないけど、桜の木、いっぱい植わってるみたいだよ?」
 「あそこ何回も通ってるけど、桜の時期に通ったことないからわからんね」


うん、わかんないから行くんだよ!?
でも確実に、気持ちはお花見に傾いてるな。
あと一押しだ。


 「土曜日だったらカンカン照りでもないし雨でもないから、佳音連れて車乗って行ってみるかい?こっからだったら30分かかるかかかんないかくらいだと思うけど」
 「そんくらいならねぇ……連れてってくれるかい?


獲ったどーーーーー!!!アップ
頭の中で、大漁旗をばっさばっさと振る。もうめいっぱい振っちゃう。
かくして、引きこもり老人を外に連れ出す準備は整ったのでした。

北海道の田舎町に生息する、ヘンなもの大好きな奴です。

84歳になるばーさまと、来年還暦を迎える母と、来年ランドセル背負う娘と、今年で大台に乗る私の4人で暮らしてます。

それでは、軽く、キャラ紹介。


ばーさま

 84歳。

 持病オンパレードで引きこもり気味。

 たまにこっちが予想しないようなギャグを真顔で言う。

 要介護2。


母(みー)

 59歳。

 メタボってるけど間食はやめるつもりがないらしい。

 職業、介護職。

 たまにこっちが理解不能な自分専用言語を使う。

 リアルにコンピューターおばあちゃん。


娘(かの)

 5歳。

 食べ物の好みがシブい幼稚園児。

 たまにこっちがひっくり返るような哲学的なことをさらりと言う。

 大きくなったら「ママになりたい」。


私(ねーちゃん)

 29歳。

 ヘンなもの大好きな主婦モドキ。

 たまに家族がドン引きするような料理を平然と作る。

 重度の声フェチ。


女ばかりのこの家じゃ、おもしろいことは日常茶飯事。

「介護は、する人の人生を奪う」とか言っちゃってるけど、そんなの全然気にしないの。

だって、毎日爆笑だもんよ。

せっかくだから備忘録代わりにBlogにしてみようかな、なんて思っちゃうくらい。

興味があったら見てやって!

あ、プロの方からの「それはダメだよ」っていうツッコミが来るのもちょっと期待してる。

どーせなら、ちゃんと介護しつつ笑いたいもんね!