母を思い出すもの。
 
 
 
 
私が幼い頃、
母の選ぶケーキは
決まってモンブランだった。
 
ショーケースを前にして、
一度は全体を
さっと見渡すけれど、
 
注文のとき、母は決まって
 
「モンブラン」
 
と言っていた。
 
 
その当時のモンブランは、
 
スポンジの上に
こんもりと生クリームが盛られ、
さらに黄色いマロンクリームに
全体を覆われて、
 
金銀色のアルミ箔の上に、
上品に乗せられていた。
 
 
その姿を見るたびに、
モンブランは大人の食べ物だと、
よく思ったものだった。
 
 
 
 
そうして私も大人になり、
 
秋にケーキを買うときは、
モンブランを選んでいる。
 
 
今時は、
栗の風味を活かしたもの、
底がタルト生地のもの、
見た目が美しいもの、
 
などなど
いろんなものがあるけれど、
 
それがどんなものであっても、
やはりこの
 
「モンブラン」
 
という響きにいつも、
特別な感情を抱いてしまう。
 



 
 
秋分の日は、
休日出勤の一日。
 
 
もう間もなく、
慣れ親しんだ職場が
移転となるため、
 
最後の荷造りへと向かう、
その日の朝に。
 
  
早朝こっそり家を出て、
近くのスタバでひとり、
 
オータムブレンドコーヒーと
モンブランでモーニングを。