いつも思うのです。
大好きな人を、いや、大好きだった人を触るのも疎ましく思う瞬間はどうしてやってくるのでしょう。
触られただけで溜息が漏れ、ほんの少し肌が離れただけで狂ってしまいそうになったほどの人だというのに
今では私の視界に彼の影がちらつくだけで嘔吐しそうになるのです。
動物のように愛し合った仲でも、体と心は別物なのだと思い知らされる時は誰にでも訪れるものなのでしょうか。
今、私はあなたを心から嫌悪しているのです。
何がきっかけだったのかはよくわかりません。
ただひとつ言えるのは、私の中にはもうあなたを受け入れる余裕が無くなってしまった、ということ。
以前はあんなにあなたを求め、心に体にあなたを押し込もうとしていたのに。
おかげで私は人に噛まれた痕は案外すぐに消えてしまうことを学びました。
幼い頃犬に噛まれた傷はあんなにも痛くて未だにその傷は私の左手に残っているのに、なんて人間は力が弱いのでしょう。
あなたに噛まれた傷痕は体中どこを探してももう見つからないのです。
いえ、もともと傷痕などついていなかったのかもしれません。
きっとあなたは優しく甘くわたくしの皮膚を口に入れたのでしょう。
私の中にはしっかりと痕を残して。
サヨナラ サヨナラ
もうあなたを好きになる事はないでしょう。
『人間らしさ』を捨ててお互いを貪り合った幼い頃の私たち。
人を嫌いになる、ということは
自分を守る防衛手段だったのですね。
ありがとう ありがとう
サヨナラ。
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辻仁成ファンに怒られそうだ。
痛くてごめんなさい。
山田詠美の『検温』っていう短編がすきなんです。